迷宮の恋物語

□14.
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今日は昴兄の誕生日です!


なので私はこれからの寒い季節に使ってもらえるよう、ニット帽を買った。
ランニングにも使えるからね!



迷宮の恋物語【14】



下へ降りると琉生兄がいた。
それに絵麻ちゃんも。


琉「……どう?」

絵「わ…」

琉「これで、いい?」

絵「は、はい!とても!」


「あ、アレンジしてもらってるんだ」

琉「空璃。おはよう。あとで空璃にもしてあげる」

「私はいいよ、」


手を振ると琉生兄はムッとした顔になる。


琉「…ダメ。今日は、特別な日、だから」

「昴兄の誕生日だから?」

琉「うん。だから、綺麗にしよう?」


真剣な琉生兄。
美容師魂恐るべし。
こうなると琉生兄は頑固であることを私は知っている。


「じゃあ、お願いします」

琉「うん!良い子、空璃」


そして頭を優しく撫でてくれるのだ。



絵麻ちゃんの編みこまれた髪。
サイドには蝶の髪留め。

私にも編みこみを施し、花の髪留めをしてくれる。


琉「うん。バッチリ」

「ありがと、琉生兄」

琉「どういたしまして」


嬉しそうな顔。
こっちまで嬉しくなる、優しい笑顔。


琉「…じゃあ、仕上げ」


コテを取り出したけど、
しばらくカチカチと音を立てていた琉生兄は。


琉「…壊れてる」

絵「…え?」


取ってくるね、と仕事でまた早く行かなきゃいけないのに頑張ってくれる琉生兄。


「仕事熱心というかなんていうか」

絵「ね。すごいね」


絵麻ちゃんと笑いあった。


「あ、ちょっと私飲み物飲みに行ってくるね」

絵「ん。いってらっしゃい」



* *



ガチャリとリビングのドアが開く音がして、
早くも琉生さんが戻ってきたのかと思うと。


「琉生兄ー!」


風斗くんの声だった。


風「あれ、琉生兄いないの?」


リビングを見渡しながら風斗くんが言った。


絵「琉生さんなら今ちょっと部屋に行ってるよ。もうすぐで戻ってくると思うけど」

風「なんだよも〜!店に行ったら家だって言ってたのに!」


かなりイライラしてるようだ。
しきりに壁にかけられた時計を気にしている。


絵「あ、あの風斗くん、お仕事だったんじゃ…」


私が言うと、風斗くんはこちらを振り返った。
さすが、全国の女の子を虜にする国民的アイドル。
身内だとわかっていても天使のようなスマイルに見つめられると……。


風「なんでそんなことパンピーのアンタに教えなきゃいけないの?」


あの笑顔できついことを言ってきた。


風「あ、わかった。アンタ、情報売る気なんでしょ。あー、もう、油断もスキもないよね〜」


その言葉にカチンと来て歯を食いしばる。


「あ、また酷いこと言ってる」


助かった…!

素直にそう思った。
良いタイミングで空璃ちゃんが来てくれた。


「風斗、仕事は?どうしたの?」


こちらにやってくると、空璃ちゃんは首を傾げてそう言った。


風「これから収録あるんだけどさー、
 そこのヘアメイク、全然センス無いんだよね。
 だから琉生兄にやってもらおうと思って来たんだけど」

「それなら、もうすぐで戻ってくると思うけど?」

風「あんまり時間ないんだよ」


空璃ちゃんは、ある程度風斗くんと離れていたのにも関わらず、
風斗くんは話しながら空璃ちゃんに近づく。
一歩一歩。


風「それにしても空璃の髪、
 琉生兄にアレンジしてもらったでしょ?
 すごい可愛いじゃん」


ふわりとさっき私に対しての態度とは
対極な行動で、空璃ちゃんの髪に
触れている。

空璃ちゃんの肩が動く。


風「僕が仕事の間、そんなカッコを他のやつらに見せびらかすんだ、ふーん…」

「しょうがないじゃん。今日は昴兄の誕生日だよ?」

風「そーいえばそんな日だったか、昴兄によろしく言っといてよ」

「ん」


作ったような営業スマイルなんかじゃない、
とても純粋な笑顔を空璃に向ける。
やっぱり双子だなぁ。

でも顔が近すぎる気がする。


風「琉生兄遅いし今日は諦めるか…」

「そうすれば?そろそろ電話かかってくるんじゃない?」

風「冷たいなぁ。ま、言われなくても行くけどね。じゃあ行く前にひとつ」


風斗くんは頭を傾けると、
空璃ちゃんの唇にちゅっとキスをした。


絵「……!!?」

「っちょ…っ」

風「ごちそーサマ」


ぺろっと舌を出して無邪気に笑うと、
タイミングよく鳴った電話に嫌な顔した風斗くん。

さっき言ってたセンスのないヘアメイクのことを話し、
皆が待ってる、と聞きうんざりした表情をする。

少し不機嫌に電話を切ると。


風「あ〜あ、琉生兄がいないなんてツイてないな」


そして空璃ちゃんの方を向く。


風「ま、久しぶりに空璃といれたし。
 …邪魔なオネーサンがいるけど」

絵「む…」

「風斗…」

風「おこんないでよ。空璃の可愛い顔が台無しだよ?」

「ハイハイ」


ぎゅっと風斗くんが空璃ちゃんに
抱きつくのを見せびらかされてから、
風斗くんは私にニヤッとされる。


風「じゃーね、キレーなオネーサン?」


すっごくからかう口調で言われた。
ムカつく。



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