迷宮の恋物語

□11.
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あれから数週間後。
待ちに待った夏休みがやってきた。

東京から飛行機、フェリーと乗り継ぎ、数時間かけて離島に辿りついた。
その間の時間は眠くなったり、周りがうるさかったりと騒々しいものだった。





迷宮の恋物語【11】





「うわーっ!これがプライベートビーチ!」


絵麻ちゃんは驚きの声をあげる。
目の前に広がる、どこまでも青い海。
さらさらで真っ白な砂浜。
南国の水上コテージを思わせるおしゃれな別荘。

毎年行ってるけど、やっぱりこんなものが私たち家族だけのものだなんて、今でも信じられない。

豪華すぎる。凄過ぎる。



風「空璃。コテージで勉強しよーよ」

「あ、うん。そうだね」



私たちはこれでも受験生だ。
家族旅行だし、楽しみたいんだけど…
それに、絵麻ちゃんもいる今年こそ、遊びたいって思うのに。



風「…なんか、嬉しそうじゃないね」

「ん?」

風「あの新しい姉が気になるんでしょ?勉強なんて嫌、なんて思ってるんだ?」



にやっとした顔をしながら、私の顔を覗き込む風斗。



「だって…」

風「今日は折角この日のためにちょっとでもここに来る許可もらったんだから、僕とできるだけ長い時間一緒にいてよね」



ほら、またそうやって束縛する。
ドキッとする言葉を言う。

強引に私の腕を掴んで椅子に座らせる風斗。
そして宿題と資料集を取り出していく。



風「ほら、空璃も出しなよ」

「はいはい、分かってますぅー」



勉強っていったって、風斗のことだから途中で投げ出すに決まってる。
そのときまで一緒に勉強しよう。

服の下に来ている、前に買った水着が少し窮屈だけど…。
これくらい我慢しよう。









風「空璃ーこれどんな漢字だっけー」

「それは……こう、かな」


さらさらとノートの余白に漢字を書く。


風「空璃って漢字書くの得意だよね」


耳元から聞こえる風斗の声。

また、風斗ってば…!


「ほら、書きなよ…んっ」


突然唇に押し付けられた何か。
目を見開いていたせいか、目の前には風斗の顔が近くにあって。
風斗も目を開けていて、ちょっと視界がぼやけてしまう。


「……っ…!」

風「もっと近くに来て。舌入んない」

「ちょっと……!」


ぐい、と腕を掴んで再び唇を重ねてきた。
舌を動かして、私の強く閉じた唇の表面を舐める。
それが恥ずかしくて、ドキドキして。
誰かに見られていないか、すごく心配で。


風「だいじょーぶ…あれで丁度隠れるし…」


風斗の言う「あれ」は、此方と海を境にするコテージの端に置かれた植物で。
大きな葉っぱで隠れてると言っているらしく。

そういう問題でもなくて!


「…そんな、の…ここに来たら終わりじゃ…!」

風「心配しすぎ。見られてもいーじゃん。見せ付けられるし?」



空璃は僕のモノってさ。



反論しようと開いた口を標的に、風斗はまた強引にキスをした。
私は向かい来る風斗のそれに逃げる。
絡めさせまいと、必死になって。


風「…逃げんな。バカ」


酸素補給に唇を少し離してから発せられた言葉。
その言葉にドキッとしている間に、再び入ってくる。
絡め取られるそれに、ひどく恥ずかしさを覚えて、顔が熱くなる。


風斗の吐息が、色っぽさを含んでいて、こっちまで熱い吐息を漏らしそうになる。

ああ…なんでこんなに抗えないんだろ…

夢中になっちゃうんだろ…


風「…今はここまで…」


離された唇は湿度を帯び、水を飲んだのかと思うくらいに濡れている。


風「次は水着姿でも見せてもらおうかなー?」

「みず…!」

風「着てるんでしょ?その下に」

「そう、だけど…」

風「今すぐ見せて。…自分で脱ぎたくないなら、僕が脱がせるけど」


手が服に伸びてくる前に、私は椅子から立ち上がって。


「自分で脱いできます!」


一際大きな声を出して別荘の中に入る。


風「…はぁ…かわいーんだから…もう…」


祈「随分空璃と楽しそうだね、風斗」

風「あんたには関係ないでしょ」

祈「ここ、座っていいかな?」

風「……本読んでるだけなら」

祈「ありがとう」


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