迷宮の恋物語

□06.
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新たな暮らしの始まりである、5月22日。


京兄曰く、昼頃に来るらしい。



みんな集まるように、京兄はリビングへ収集をかけた。


みんなどんな子がくるのかは少し把握しているし、早く来ないかそわそわしてる感じもする。



『迷ってないかな…。もう昼だよ』


椿「あっはは、空璃ってばかわいーんだからー」


梓「高校生みたいだし、大丈夫だと思うよ」



梓兄が宥めるようにぽんぽんと頭を撫でた。


その手にすごく安心した。



要「侑ちゃんは補習らしいしねー。ちゃんとこの時間は家族全員来るようにしようって言ってあったのに」


右「風斗や琉生は仕事が忙しいので仕方ないですが…」



ピンポーン



軽快なチャイムが鳴って、ドキリと心臓が鳴った。



『(来た…!)』



そう思うと余計に心臓が動き出す。


緊張し過ぎだよ、自分…!


ぎゅうっと服を握り締めたら、



梓「緊張してるの?」


『う、うん…』


梓「ふふ、じゃあ大きく深呼吸してみよっか」



背中を撫でてくれる梓兄の手が優しい。

私はゆっくり深呼吸した。



「―――、」



遠くで聞こえた京兄の声と、ソプラノの高めの声が耳に届く。


やっと来た。待ち焦がれた、年上の同性の兄弟。



「日向…朝日奈絵麻です!これからよろしくお願いします…!」










迷宮の恋物語【06】











雅兄と弥はもう会っていたみたいで、少し打ち解けていた。


要兄は姉が来て早々抱き締めて誘惑しているし、


椿兄も要兄に便乗して抱き締めるし。



『(女に飢えたケダモノか!!)』



そんな2人を見てぷるぷる肩が震えた。


要兄は根っからのケダモノだけど…。


だから、梓兄が椿兄を殴ってくれたことに感謝。


ついでに要兄も殴って欲しかったな。


学生の紹介に入った京兄の言葉にビクリとして体が硬直した。



「ブライトセントレアに通ってるんですね」


祈「うん、そうだよ」



祈織兄は頭がいいミッション形の高校に通っている秀才。


お姉ちゃんが驚くのも分かる。



右「そしてここの唯一の女の子で――」



バターーーン



大きな音を立てて扉を開け放ったのは侑介だった。



侑「わり!お、遅くなった!」


「あっ!朝日奈君!?」


侑「えっ!?なっ……!なんで日向が…っ!?」



知り合い…なのかな。


ぼー然と侑介と周りの事の成り行きを見守っている自分。


さっきの緊張はどうしたって?


もう吹っ切れたよ
というか、脱力?


侑介のおかげ、というか何と言うか。


本当に、空気の読めない(KY)な兄だよ。



侑「お、俺は認めねーからな!同級生がキョーダイとかありえねーだろ、フツー!」



喚く侑介。


その顔は赤くって、複雑そうな顔をしている。


遠目でも、それはくっきりと見えた。



『…侑介五月蝿い…』


「いーか!ゼッテー、ガッコでキョーダイとか言うなよ!?誰にもバラすな!」



そんなこと言ったらお姉ちゃんが可哀想だよ。


私からはお姉ちゃんの後頭部しか見えないから、表情は分からないけど。



『(いつ自己紹介すればいいんだろう)』



なんだか五月蝿い侑介の参上に私の存在が薄れているような。



梓「京兄。空璃…忘れてる」


右「ああ、そうでした。侑介の登場に遮られてしまいましたね」


要「妹ちゃん、安心して。ここにはもう一人兄弟がいるんだよ」


「そうでしたよね!?あの女の子…」


『(覚えててくれてたんだ…)』



ほんわかしたこの気持ちは何だろう。

ふわふわと浮かされたような気分に陥る。



右「貴方とふたつ下の妹で、空璃です」


『……朝日奈、空璃…です』


「これからよろしくね、空璃ちゃん」



少し背の高くて、優しそうで、可愛い、お姉ちゃん。


笑いかけられて、手を差し出された。


陽出高校の制服を纏った姉の手をきゅっと握った。



「可愛い、空璃ちゃん」


『…っ…///』


椿「だろー!?俺の自慢のかーいい空璃★もちろん、これからは君も俺のかーいい妹になるんだけどね〜」


「!」




家族
  兄弟―――



今日から昨日とは違った生活が始まる。


一人の姉が加わることで、どんな生活になるんだろう。



椿「ね、ね、俺のことさ、お兄ちゃんって一回呼んでみてくれない?」


「お……お兄ちゃん?」


椿「うーん……♡やっぱり空璃に呼ばれてるものとは違う萌を感じるよね〜」



でた。椿兄の妹キャラ萌え


昔、私も椿兄にしつこく言われたものだ。


結局、私が出した呼び方は、侑介たちが呼ぶ「椿兄」だったんだけど。



「は、はあ……」


『椿兄のこういう時はスルーした方がいいと思うよ。付き合ってたら振り回されるだけだし』


「そうだね。空璃ちゃんもこんな経験あったの?」


『まあ…昔小さい頃に…』


「なんだか面白いね」


『…そうですか?』



楽しそうな笑顔を見せられて少しふらつく。


偶には心を鬼にしてくださいね、というと「頑張るよ」と返ってきた。




こんなバカな兄たち(主に椿)に優しすぎる。
初対面だからそれは当たり前なのかな、とも思うけど。


それが、姉への第一印象。


*end

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