迷宮の恋物語

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まだ重たい瞼を開いて、パジャマから日常着に着替えると、とぼとぼ5階へ歩を進めた。








迷宮の恋物語【01】








毎朝、私はとんでもなく恥ずかしい始まり方をする。


そのためかぱっちりその時目が覚めてしまう。


それは、テンションが高い椿兄が熱い抱擁を求めてくるから。


もちろん、椿兄が一方的にしているだけ。



椿「おっはよー★寝起きの空璃もかーいい♪」


「ちょっ、椿兄…暑苦しいっ…」


椿「顔真っ赤だぞ〜?照れてんの〜?」


「照れてないっ!!」



そんなに否定しちゃう?と楽しそうに笑った。


近くで事の成り行きを見守っていた梓兄が口を開いた。



梓「椿。空璃が嫌がることしないの。いつか本当に嫌われちゃうよ」



ぽん、と優しく頭を撫でてくれる梓兄が大好き。


その優しさに甘えたくなることが多々あって、まだまだ子供だな…なんて考えてしまう。



椿「それはヤダ!」



ぐりぐりと頬を擦り合わせて犬が甘えているようだ。



「くすぐったいよ、椿兄…」


椿「もー、お兄ちゃんって呼んでって言ってるでしょー!」


「わ、分かったから……っ」



顔が近いので早く離れてくれませんか。


妹萌えに目覚めてしまった椿兄に翻弄されるのは正直疲れてしまう。


でもそれでも楽しいと思える自分がいて。


いつも笑って構ってる自分がちょっと怖い。



梓「ほら椿。早くしないと仕事遅れちゃうよ」


椿「やっべ!もうこんな時間!?」



時計を見た梓兄が冷静沈着に椿兄に告げる。


慌てた椿兄はやっと腕の中から解放してくれた。


ふぅ、と息を吐くと、梓兄の手が再び頭に乗せられた。



梓「いつもごめんね、椿が子供っぽくて」


「ううん。もう慣れたかな…。でも心臓が結構危ない…かも」


梓「心臓?」


「だって兄弟と言っても男女なワケだし…。椿兄もイケメンだから…」


梓「はは、それもそうだよね。…でも、椿ばっかりズルイな」


「?」



梓兄の声が聞き取れなくて首を傾げたら梓兄が「何でも無いよ」と言って頬に軽くキスをした。


突然のことに曖昧な表情をして梓兄を見つめていたら、「じゃあいってきます」と笑顔で去っていった。


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