キセキと白猫

□Tip off
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side Kise


中2の春。それまで燻っていたオレ…黄瀬涼太はバスケ部に入部した。

超強豪らしいけど2週間で1軍に昇格することになった。

2軍の奴らは皆、
「すげー」
「初めてまだ2週間しか経ってねえぞ」
なんて口々に言っている。

当然でしょ、だってオレだし。

それに、あの白浪さんの言っていた通りに…、まあ、オレも自信たっぷりですぐ上がる、なんて口走ったけど…
すぐに昇格した。


今日から1軍練習に合流することを、あの子ではないマネージャーから告げられる。
1軍となるとさすがに別格だった。
ここでレギュラーになるにはさすがに少しはかかるかも。


第一体育館に行くと、またあの青峰大輝が練習していた。
ってか…中学生でダンク決めるって。凄すぎだろ。

ゴールにぶら下がりながら、


「さつきー、何で黄瀬と一緒なんだ?」

「黄瀬くん、今日から1軍なの」

「へえ、始めたばっかなのにスゲーな」


お前本当に中学生かよ。
つーか会って2回目で呼び捨てか!


「ねえ青峰君、テツ君知らない?」

「知らねー」


青峰はドリブルして再び練習を再開した。


「困ったなあ、黄瀬くんの教育係テツ君なのに」

「教育係?」

「うん、先輩がね、黄瀬くんは2年だけど途中入部だから1年生と同じように雑務もさせろって。
 だから教育係をつけることになったんだけど…」

「それがテツくんって人っスか」

「呼びましたか」

「?」


第3者の声にオレは振り向く。
後ろ右を見ても左を見ても誰もいない。


「こっちです」


前を向けば、目の前に男子。


「…あ、…っうわぁああっ!?……っだ、誰…」

「あ、テツくーん!」


マネージャーは彼にそう呼んだ。
え、この人っスか。


「あのね、彼が昨日話してた黄瀬くん」

「どうも。黒子テツヤです」


簡単に自己紹介すると、彼は律儀にお辞儀をした。
こいつ…影薄いのに教育係…?











それなりに時間の経った頃、
1軍ではゲームが行われた。
主将である赤司は周りを見ているだけのようだ。
そして、その隣には銀色の髪をした白浪さんがいた。
あの2人は俺が見かける度に一緒にいる気がする。
仲がいいのか、マネージャーとして彼にくっついているのか。
分かりかねる。


ゲームを見ていて思ったが、やっぱり1軍は別格だ。

同じクラスの紫原。
長身を生かし、ディフェンスをしている。
そう簡単にゴールを入れることは難しそうだ。

緑間は3Pシュートを得意としている。
正直凄すぎる。

青峰を初めとし、すごい奴らがぞろぞろ。

これは面白くなりそうっスね……!
じゃないと、入った意味がない。


「行け!速攻!」


隣のコートから聞こえた声に振り向く。
教育係である黒子がレイアップを決めるところだった。


ガンッ


「!??」

「コラァ黒子!レイアップどフリーで外すな!」


あれが……俺の、教育係………











部活が終わった。
いろんな意味で疲れた。


クイッ


「?」


服の袖が引っ張られる感覚に、オレは振り返る。
視界の隅に銀色が見えて、オレは視線を下にやった。


「…白浪さん?」

『うん。どうだった?1軍』

「正直、度肝抜かれたっスわ。レベル高くて」


そう言うと、白浪さんは嬉しそうに微笑を浮かべた。

(何で自分が褒められたワケじゃないのに、そんなに嬉しく思うんだ?)

彼女という人間そのものが不思議すぎて、
俺には到底理解し難いだろう。


「黄瀬くん」

「?」

「こっちです」

「うわぁあ!?」


またも教育係・黒子くんに驚かされた。
知らずのうちに背後に立たないで欲しい。


『黒ちゃん、お疲れ様』

「はい。白浪さんも」

「っちょ…、フツーに声かけて欲しいっス」

「…普通に声をかけてますよ」

「どこがっスか…」


白浪さんはしれっと言葉をかけた。
なんでこんな影の薄い彼に驚かないのか…
やはり目の前の白浪深織は謎だ。


「それより、1年生と掃除お願いします。
 モップは用具室の中です」

「教育係って、そういう事っスか…」

『?何の教育係だと思ってたの?』

「何でも無いっス」


不思議そうに首を傾げて尋ねる白浪さんに
恥ずかしくなりオレは急いで黒子くんの後を追った。
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