AmouR.

□#04.麦藁色をかぶった少年
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「悠太は買い物…祐希は悠太の風邪がうつって寝込んじゃうし…黄色君どうしよう…」


公園まで歩く美雨は不安でしかたなかった。
祐希は男の子だからきっと少年と意気投合して何日も遊べたんだ。
女の子は男の子よりも力が無いから、スリルのある遊びは一緒に出来ない。


近くに来ると、黄色が公園の前でぽつんとあって。
祐希を待ってたのかな、と思い駆け足で近づいた美雨。


"!!"


美雨に気づくと少年は頬を赤く染め、手を振りながら近づいてきた。


「?」


突然手を掴まれたと思うとあの日のガシャポン。祐希にあげればいいのだろうか。
そんな事を思っている美雨に少年は、


「Danke」


そう聞き取れた。
…瞬間、後ろから少年のお母さんと思われる女性が何かを叫んでいて、
少年はそれに答えるように振り返って何かを叫ぶ。

少年は美雨に向き直って


"今まで楽しかったよ、可愛いお姫様"


美雨は意味が分からずボーっとしている。
そんな彼女に少年は顔を近づけ頬にキスをおとした。


『っ!?』


顔が離れると、最初出会った時の様に爽やかに笑った。
美雨が未だに呆然と、そして赤くなりながら遠ざかる少年を見つめていた。


「…ありがとう、また会えるといいね」


次会った時は言葉を交し合えるといいな。
そんな願いを込めて。



「美雨?」

「あ、悠太。買い物終わったの?』

「うん。それにしても顔赤いよ。大丈夫?」

『ん…暑いからかな?』

「ホントに今日暑いよね。俺喉渇いちゃった。美雨、家来る?」

『うん!祐希に渡さなきゃいけない物もあるし』


手にある物を見せる。


「ガシャポン?美雨それ好きだったっけ?」

『ううん、違うけど…祐希にお届け物』

「?」







「!!美雨、ガシャポンしたの?」

『ちーがうよ。あの少年に貰ったの』

「え…」

『祐希にあげたかったんじゃない?』


よかったね、と美雨は笑顔だが、
祐希は浮かない顔。


「……自分で当てたかったのに…」

『大事にしなきゃねっ』

「……」


祐希はぼうっとそのカプセルを見つめていた。





――届くことなく
幼い日の陽射しにとけてしまった言葉
これは大きな夏の青空が見ていた
小さな一つの物語。



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