迷宮の恋物語
□04.
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みんなの不機嫌オーラをビンビンに感じながら、私は重たい口を開けた。
「お母さんにモデルして欲しいって言われて…。
その時は1日だけお願いって言われて受け入れたんだけど、スタッフさんたちが私のこと気に入っちゃったみたいで…。
それでお母さんにまた言われて…現在に至るワケです」
椿「母さんも勝手だよなー。俺らにも言ってくれないとー」
頬をぷうっと膨らませて、私を横目+涙目で睨む。
いやいや、何で椿兄たちの許可が必要なの。
雅「そうだね、でも空璃も空璃だよ。僕たち皆に黙ってたんだから」
「え、…え、と…ごめん、なさい…」
しょぼん、と俯いて謝ると少し涙がでそうになった。
だって、よかれと思って決意したことなのに、後になって皆にこうやって尋問されて。
お母さんの為と、思ってやって…。
それだけじゃない。
私自身、雑誌のモデルにやりがいを感じてる。
いろんなジャンルの服を着たり、ヘアメイクをしたり、表情を変えたり。
結構モデルもハードだなぁって思ったけど、日に日に楽しくなってきて。
…私の選択は、間違ってた…のかな…?
そう思うと頬を伝った涙に気づく。
熱い目頭はいつまでも熱い涙を流して。
周りの兄たちは慌てだして。
泣くつもりなんて、なかったのに。
弥「わー!くーたんが泣いてるぅ!?だいじょーぶ?!」
弥が駆け寄ってきて、私の頭をよしよしと撫でてくれた。
それが嬉しくて、私は泣いた顔をあげないように弥を引き寄せた。
弥「わわっ!くーたん?」
驚く弥を無視して、弥の小さな体を抱き締めた。もちろん、手加減して。
弥の首筋は温かくて、多分、涙を付けちゃってるかも。
こんな情けない行動をする私に対して、まだ「だいじょうぶー?」と頭を撫でてくれる弥。
弥は本当にとても優しい、小さな王子様だね。
右「空璃、そんなに泣かないでください。私も、少しきつく言いすぎましたね…」
要「空璃ちゃんの泣き顔も可愛いけど、やっぱり笑顔が見たいよね」
昴「っど、どうしたんだよ、京兄たち…!?」
風呂上りなのか、タオルを肩にかけながら昴兄がやってきた。
兄妹みんなが群がって集まっている光景はあまりにもおかしかったのだろう。
その中心で、弥に抱きついて泣いている空璃にも驚いた昴兄。
椿「泣くなよ〜空璃!俺たちだって別に空璃を責めてるわけじゃあ…」
梓「それ、怖い顔してた椿が言うこと?」
椿「そ、それは…」
雅「みんなで空璃を泣かしちゃった…んだよね…」
雅兄の言葉で皆がずーんと肩を落として落ち込んだ。
そんな光景にぎょっとする昴兄。
状況が全く理解できていないので、少し可哀想な感じさえする。
要「ほら、空璃ちゃん。もう泣かないの」
弥ごと私を抱き締めた要兄。
弥もそのことにひどく驚いた顔をした。
弥「かなかな、苦しいよ〜!」
要「いーのいーの。これも空璃ちゃんを慰めるためだと思って」
椿「あー!要兄ずるい!俺も空璃ぎゅー★ってする!ほら、梓も!」
梓「ちょっと、椿…」
後ろから椿兄と梓兄。
要兄の腕も一緒に私と弥を包んだ。
「んも、ちょ、やめて…苦し…」
弥「…」
「!弥の声でなくなってる!ちょっ皆離れて!」
叫ぶと、ようやく離してくれた。
弥を見ると案の定、目を回して気絶していた。
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