過去拍手作品
□神々の悪戯 正月篇
1ページ/1ページ
「もうすぐ年が明けます」
唐突に月人さんが言い出した。
規律や伝統を重んじる性格の彼には重要なことらしく、少しばかり楽しそうに見えた。
「年が明けると何かあるのかい?」
「新年を迎えると人間は神社や寺に参拝にいくと聞きました。それを初詣と言うらしいのですが、そこで神に祈るらしいです」
月人さんがバルドルさんの質問にそう答える。
凄いと感心した。彼は教えたことをすぐに知識として吸収するので、すごいとしか言い様がない。
「僕たちの世界にはお寺や神社なんて無いよ?どうしたらいいの、ツキツキ?」
「日本ではそういう風習があるらしいですが、他国でのことは俺には分かりません」
…まぁ、そうでしょう。
他国では大人は酒を飲んだり、パーティーみたいなことをするとテレビで見たことがあります。
それよりも日本が好きなバルドルさんが、この初詣などに興味を示さない訳はないと思い、バルドルさんを見ると━━
「ワオ!さすがはニホンだね!趣がある。私も日本に産まれたかったな」
と、一人でテンションが上がっていた。
「新年迎えるのでしたら、年越し蕎麦や雑煮などを皆さんで作りませんか?」
月人さんの言葉に思い出したように私が言うと、皆さんがこちらを向いた。
「…蕎麦はわかるが、ゾウニ?とは何だ?」
トールさんからの質問に、ハッとした。トールさんは料理が得意なのだから興味を示さないはずがない。
「雑煮は餅を使うお料理で、主にお正月などに食べられるものです。味噌や醤油をベースとしたスープに餅を入れるんです」
好みで白菜などをいれても良いだろうと言えばなるほど、と納得して下さった。
それからハデスさんたちもきて、皆で餅を作ろうと、杵と臼を持ってきた。それから皆で楽しみながら餅をつけば、自然と皆の顔に笑みが見える。
雑煮に使うだけなのに、と思いながらも楽しそうに大量の餅をつく彼らに、それも良いかと思った大晦日だった。
....fin