★MAIN★

□温もり
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「誕生日おめでとう、神楽ちゃん」
「あー…その…おめっとさん」

朝起きて早々気恥ずかしげに目線をそらす銀ちゃんと、それとは対照的にニコニコとした新八にそう言われ、私は面喰らった。

「何アルかお前ら気持ち悪い」
「気持ち悪いとはなんだコノヤロー。せっかく銀さんがお前のようなクソガキの誕生日を祝ってやろうというのに」
「銀さんいい加減素直になってくださいよ。朝からそわそわしっぱなしじゃないですか」
「うるせーバカヤロー。これはアレだよ、今日パチンコの新台が入るからだよ。とりあえずほら神楽、受け取れ」

そう言って銀ちゃんが取り出してきたのはテレビほどもある大きな箱。


「何アルかこれ」
「誕生日プレゼントだ。ありがたく頂戴しろ」

開けるとこれでもかというほどの酢昆布が入っていた。思わず目を丸くする。いくら酢昆布といえど、これほど大量に買い込むのは相当な値が張るはずだ。

「…まさかお前ら、これ盗んで」
「ねーよ!!何失礼なこと言ってんだクソガキ!銀さんのポケットマネーなめんじゃねーぞコラ。ったく、それじゃ俺新台やってくるから」
「ちょっと銀さん!ったくもうあんなひんまがった性格してるから頭があんなになるんだよ」
「新八ィ、ホントに銀ちゃんそんなにお金あったアルか?」
「ははっ、そんなわけないでしょ。銀さんね、神楽ちゃんの誕生日の三か月前からコツコツお金貯めてたんだよ。今年こそ奴を驚かせるって。だから最近甘いものあんまり食べてなかったでしょ?」

あの銀ちゃんが、甘いものを我慢してまで私のために…。
そう思うとどうしようもなくむずがゆい気持ちになって、私は思わず箱の中の酢昆布たちを抱きしめた。
そしてさっきからずっとニコニコしている新八に右手を差し出す。

「…何?」
「鈍い奴アルナ。お前のプレゼントはないのかヨ」
「あー…あはは…ごめん神楽ちゃん、実は僕からのプレゼントないんだよね…」
「ハァ!?」

何を言ってるんだこいつは。銀ちゃんが酢昆布大量にくれたからってプレゼントないのを見過ごす私だと思ったアルか。

「なんなんだヨオメーヨォ!!銀ちゃんのときはあんなでっかいケーキ作ってたくせに!!」
「い、いやその…」
「もういいアル!言い訳なんか聞きたくないネ!!」

思わず万事屋を飛び出す。
分かってる、自分勝手なお願いだなんてこと。でも、私は別に大量の酢昆布とかが欲しいわけじゃない。いや嬉しいけど。
たとえ豪華じゃなくたって…酢昆布1枚でもピン子の写真集でもいいから、「新八からもらったもの」が欲しかったのに……。

(どこまでも女心の分からないダメガネアルナ!)

ふんっと鼻を鳴らし、冷たい風に思わず身震いしながら当てもなく町をぶらついていると思わぬ人物と出会った。

「あら神楽ちゃん。こんな時間にどうしたの?」
「姉御!!」

私の大好きなその女性は相変わらずきれいな笑みをたたえて私を見つめる。

「姉御こそこんな時間にどうしたアルか?」
「ふふ、実はね、今日神楽ちゃん誕生日でしょ。そのお祝いに万事屋まで行こうと思ってたんだけど、手間が省けたわね」

そう言うと持っていたカバンから取り出した小さな箱を私に差し出す姉御。

「お誕生日おめでとう、神楽ちゃん」
「姉御…ありがとアル!!開けていいアルか?」
「ええ、もちろんよ」

破かないように慎重にきれいに包装された箱を開けると、きれいな桜色の兎の形をした髪飾りが入っていた。これは…

「姉御…これ…」
「ふふっ、神楽ちゃんならきっと似合うと思ったから…気に入ってくれたかしら?」
「姉御ぉ…」

思わず姉御に抱きつく。

「気に入るも何も、私が欲しかったやつネ…」
「この間新ちゃんと買い物したときにすごく欲しがってたんだって?新ちゃんから聞いたから、ね」
「!新八がそんなこと言ってたアルか!?」
「ええ。神楽ちゃんそういうこという子じゃないけど、態度で分かったって言ってたわ」

新八…結構私のこと見ててくれたアルナ…。でも、だったら、酢昆布の一枚くらい…。
急に不機嫌そうに黙りこんだ私を姉御が不思議そうに見つめる。

「神楽ちゃん…?」
「新八は…」
「え?」
「新八はなにもくれなかったネ…」
「えっ、新ちゃんが?うそ…そんなわけないんだけれど」

困ったように頬に手を当てる姉御。今度は私が不思議そうに姉御を見つめる番だった。

「姉御…?どうしたアルか?」
「新ちゃんね、神楽ちゃんの誕生日だってすごく張り切ってたのよ。絶対驚かせるって」
「…ある意味驚いたネ」
「違うわよ」

苦笑しながら姉御は言う。

「もう言っちゃってもいいかしら…新ちゃんはね、神楽ちゃんのためにマフラーを編んでたのよ。最近寒くなったからって」
「えっ!?」

「新八が」編んだマフラー…それこそ私の一番欲しかったものだ。でも、それじゃあなんで新八は私にそれをくれなかったんだろう?

「神楽ちゃん、良かったらうちに来ない?見せたいものがあるんだけれど」
「行ってもいいアルか?」
「もちろん。神楽ちゃんだもの」

姉御は笑って私の手を取った。










「姉御ぉ、どうアルか?似合ってるアルか?」
「えぇ、とっても可愛いわよ神楽ちゃん」

道場に着くと早速髪飾りを姉御につけてもらった。はしゃぐ私を姉御は嬉しそうに見ていた。

「ところで姉御、見せたいものって何アルか?」
「そうね、そろそろ見せないとね。神楽ちゃん、ついてきて」

そう言われたどり着いたのは新八の部屋。

「姉御、新八がどうしたアルか?」
「まぁ、見てあげて。これが新ちゃんの」

言いながら姉御は部屋の押し入れを開ける。すると…

「うわぁ…」

大量の毛糸の束がどさどさと落ちてきた。

「…努力の結果よ」
「すごいアル…」

改めてみるとすごい量だ。落ちてきたものを除いても、銀ちゃんの酢昆布の倍はあるかもしれない量の毛糸が押入れ中に所狭しと積んである。…ん?これよく見たら…

「毛糸じゃなくて…マフラーアル…」
「ふふ、いびつな形でしょ?もしかしたらそれが納得いかなかったのかもね。大事な女の子には、ちゃんとしたものを送ってあげたいものね」
「新八…」

思わず手に取ったマフラーをぎゅっと握りしめる。と、その時、どたどたと大きな音を立てながら廊下を走る音が聞こえた。

「神楽ちゃんっ!!探したよホント…まさか僕ん家まで…あ」
「…新八」

騒音の主…新八は、床に散らばる大量のマフラーもどきを見て固まる。

「イヤ…それは、その…ちょ、ちょっと最近裁縫に凝っててさ…あはは……」

ここまで来てもまだごまかそうとするバカっぷりに思わずため息が出る。それを怒りととったのか、新八は目に見えて焦り始める。

「ご、ごめんね神楽ちゃん。今日は無理だけど、来週までには銀さん並みに酢昆布を…何やってんの?」

突然一枚のマフラーもどきをぐるぐると首にまき始めた私に、新八は目を丸くする。

「…確かに穴だらけアルナ」
「い、いやっそれは…ごめん」
「これじゃ外出ても寒いアルナ」
「…ごめん」

恥ずかしそうに顔を伏せる無器用なダメガネに腕を絡める。

「なっ!かっ、神楽ちゃん!?」
「これならあったかいアル」

にこりと笑えばあっという間に真っ赤になる、冴えないけど私の大好きな顔。

「…か、帰ろうか?銀さん、ケーキ用意して待ってるよ」
「そうアルナ。姉御も一緒にいこっ!」
「…ええ。でも私は後から行くわ」




「…ふふ、邪魔しちゃ悪いものね」

仲睦ましげに寄り添って歩いていく二人を見て、お妙はため息をつく。

「妬けちゃうわね、まったく」

しかしその言葉とは裏腹に、彼女は幸せそうに微笑んでいた。

















神楽ちゃんんんんんんん!!!!!!!お誕生日おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
いやほんとすいまっせん!2日も遅刻してマジですいまっせん!!実はね、土日は管理人はプライベートの用事でパソコン使えなかったんですよ。だからもういっそのこと誕生日の一日前にでもSS作ってうpしちゃおっかなーみたいなことも考えたんですが、なんか芸がないじゃないですかそれじゃ^^;…苦しい言い訳ですね、すいません。でもとりあえず書いたので、これで許して下さい。ごめんなさいm(__)m
銀さんは本当はパチンコじゃなくてケーキ取りに行ったんだよーという蛇足設定をお伝えして、今日はこのへんで。では、ご閲覧いただきありがとうございました!

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