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□貴方の初めて(中編)
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部屋の中に入るとまず目に飛び込んできたのは、机の上に広がっている本だった。


その本はトランクスには難しくて、文字は読めてもまだその言葉の意味を理解する事が出来ない。


そして更にその先へと視線を走らせると、そこにはベッドに寝転んでいる悟飯がいた。


無造作に仰向けの状態で寝転んでいる悟飯からは静かな寝息が微かに聞こえてきて、そこでやっとドアをノックした時に返事が無かった意味を理解する。


布団もかけずに寝ている悟飯の表情はとても穏やかで、血色も良い。


トランクスは開きっぱなしになっている本を閉じると、ゆっくりとした足並みで悟飯の寝ているベッドへと近付いていった。



「悟飯さん、」



もう一度声をかけてみる。案の定、悟飯からの返事は無かった。



「今日の晩御飯はカレーだって。」


「…」


「もう少しで出来るから…早く行こう?」



言葉だけでは起きないと感じたトランクスは、悟飯の肩を掴み体を軽く揺すった。


しかしそれでも悟飯の瞼は微塵も動かず、ただ静かな寝息が聞こえるだけだった。



「…もう、」



トランクスは困ったように肩を落とした。

肩を落として…視線も落とし悟飯をジッと見つめた。


相変わらず悟飯はまだ夢の中で、目を覚ます気配は微塵も感じられない。


いつも笑顔をたたえている印象が強いせいか、こういった無表情がとても珍しくてしょうがなかった。



『もしかしたら…初めてかもしれない。』



こんなにも穏やかな表情で寝ているのを見るのは本当に珍しくて、こんな悟飯の寝顔を見るのは初めてではないだろうかとトランクスは思った。


それと同時に、またどす黒い思考が生まれてくる。



『この表情も…きっと、いつか誰かの物になっちゃうんだろうな…。』



最近知り合ったと言うその女性か、はたまた違う女性か。

少なくとも自分では無いだろうとトランクスは思った。



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