拍手

□おねだり
1ページ/10ページ




「…………。」



今日の朝はいつもより早く、目覚ましが部屋中に鳴り響く前に目が覚めた。


今日は仕事も休みだしこれと言って用事も無いのでいつものようにこんなに早く目覚めなくても良いのだか…


自分とは違う気配を感じて、思わず目が覚めてしまった。

閉じていた瞳をゆっくりと開けると、そこには悟飯がいた。


ベッドに寝そべりながら、じっとこちらを見つめている。

口元は少しだけ緩んでいて、笑っているようにも見えた。



「おはよう、トランクス。」


「…おはよう、ございます。」



寝起きのせいか、思いの外声が掠れてしまっている。

トランクスは言葉を詰まらせながらもそう言うと、あくびを噛み殺しながらまだ重い目を片手で擦った。


確か昨夜は悟飯がトランクスとブルマの住んでいる家に来て、一緒に夕食を食べてそのまま寝た筈だ。


寝る時悟飯は与えられた部屋に行ったので、昨夜は一緒のベッドで眠った記憶は無い。



「……どうかしましたか?」



悟飯だって今日は仕事が休みの筈だ。

たまにはどこにも出掛けないで家でゆっくりしようと話し合った記憶はまだ新しい。

わざわざこの時間に起きてトランクスのいるこの部屋にきたのだから、きっと何か用事があるのだろう。


トランクスはそう思い、目をパチパチとさせて眠気を散らしながらそう言った。



「いや…特に用は無いんだけどーー」


「…けど?」


「無性にトランクスに会いたくなった。」


「………昨夜散々一緒にいたじゃないですか。」


「そうなんだけどさ。なんだろう…とにかく会いたかったんだ。」



トランクスは思わず不貞腐れた様に眉をつりあげて、そして赤くなった頬を掛け布団をたくし上げて隠した。



「…そう、ですか。」



今のトランクスにはこう返す事しか出来ない。

そんなトランクスを見て、悟飯はさらに口元を緩ませた。



「可愛い。」


「………可愛いって、愛す可しって書くんですよ。」


「…?知ってるよそれくらい。」


「………。」



このまま言われっぱなしも癪なので何か言い返してやろうと思い言ったが…今回は返り討ちにあってしまった。

完全に、墓穴を掘った。



トランクスは無言のまま、今度は真っ赤になった顔を隠すように悟飯に背を向けてしまう。



「…顔が見えないんだけど?」


「でしょうね。」


「どうしてそっぽを向くんだ?」


「…悟飯さんが意地悪するからです。」



トランクスはぶっきらぼうにそう答えた。


すぐ後ろの方で悟飯が困ったように頭をかいている気配が、なんとなくした。



_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ