おまけ
□永遠の花 (おまけ)
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窓から差し込む満月の月明かり。
時折聞こえてくる微かな虫の音。
そして母が食器を洗う静かな効果音を聞きながら、悟飯は本を読んでいた。
四人とそんなに大人数ではないが盛大に行われた悟飯の誕生日パーティーも、ついさっき終わりを迎えた。
チチはせっせと後片付けをし始め、それを手伝おうとした悟飯はチチの手によって却下された。
なんでも、誕生日の日ぐらい手伝い何てしなくて良い…との事。
勉強も今日はしなくて良いとも言われてしまった。
勉強をするのは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。
なので時間があれば勉強をしていた悟飯からすれば、この空いてしまった時間をどう過ごすか少々悩んでしまう。
そして悩んだ末、本を読むと言う所で落ち着いていた。
「もしかしてそれ、トランクスちゃんがくれた誕生日プレゼントか?」
食器を洗い終えたチチがエプロンで濡れた手を拭きながら悟飯の所へとやって来る。
本を読む悟飯のすぐ近くに真新しいしおりを見付けたチチは、そっとしおりを手に取り窓から差し込む月明かりに照らしながら呟いた。
「しかし良く出来てるだなー。中に入ってる花、もしかして菫だべか?」
「うん。何でも、花言葉は『小さな幸せ』って言うんだって。」
隣で本を読んでいた悟飯は顔を上げ、しおりを観察しているチチに視線を向けた。
「へーぇ…何だかお守りみてぇだな。」
「トランクスもそう言う意味も込めて、菫の花を選んでくれたみたい。」
悟飯の話を聞きながら暫くしおりを眺めていたチチだが、やがて何かを思い付いたかの様に笑いながら口を開く。
「何だかこの菫の花、トランクスちゃんみたいだなぁ。」
それを聞いた悟飯は驚いて目を見開く。しかし直ぐに嬉しそうに微笑んだ。
「お母さんもそう思う?実は僕もそう思ってたんだ。」
「だべ?この菫の花の色が、トランクスちゃんの髪の色と似てる気がするだ。」
新たな発見をしたように二人で喜んでいると、その二人の会話を断ち切るかの如く沸騰したやかんが大きな悲鳴を上げる。
いきなりの高音に二人そろって身を固くする。
思わず身を固めてしまったが、やかんの存在を思い出したチチの反応は実に早かった。
「いけねっ、やかんの事すっかり忘れてただ!」
そう言いながらチチは慌ててしおりをテーブルに置くと、すぐさまキッチンへと消えて行く。
悟飯はと言うと、チチの背中を見送りながら詰めていた息をほっと吐いていた。
「悟飯ちゃん。」
再び本に目を戻そうとした時に、チチが悟飯を呼んだ。
呼ばれた悟飯は声のした方へと視線を向ける。すると、チチがキッチンから顔だけを出してこちらを見つめていた。
「これから部屋の掃除するから、続きは自分の部屋で読むだ。後で温かいココアさ持ってくからよ。」
「…本当に手伝わなくて良いの?」
「んだ!こう見えてもまだまだ体力あるだよ。ピチピチギャルには負けてられねーべ!」
おどけて腕捲りをするチチは、意気揚々とキッキンへと消えて行った。
その後ろ姿を笑いながら見送った悟飯は、再び手に持っていた本を開いた。
そして今日トランクスからもらったしおりと本を見比べてみる。
悟飯が開いていたのは、昔買った花言葉の本。押し入れにしまいこんでいたものを引っ張り出してきたものだ。
菫の花が載っているページを見付けると、悟飯は目で追いながらその行を指でなぞり始める。
『菫の花言葉は…誠実、小さな幸せ、小さな愛…。』
どうやら菫の花言葉は色によって異なるようだが、全ての菫を表す言葉はこの三つのようだ。
「小さな愛、か‥‥。」
思わず呟く悟飯の脳裏に、今日のトランクスの言葉が甦る。
『僕、お兄ちゃん大好きだよ?』
もしや…と一瞬でも考えてしまった自分に、思わず悟飯は苦笑してしまう。
何をそんな馬鹿な事を考えているんだ、と心の中で呟いた。
まだトランクスは幼い。きっと自分は、兄のように慕われているだけだ。
それ故の、大好きなのだろう。
「……まさか、ね。」
悟飯は小さく苦笑しながら、しおりを本に挟み席を立った。
そしてやっぱり一緒に後片付けをしようと思い立った悟飯も、キッキンの方へと消えていった。
【END】
悟飯さん、そのまさかです(←)
この頃からトランクスは悟飯が大好きだと良い!
それよりすみません。結局牛魔王のじっちゃんは出せませんでした…!!
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