long story
□第2話
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「金がねーなら腎臓なり金玉なり売って金くらいつくらんかいクソッたりゃー!!」
「家賃如きでうるせーよウンコババア!!」
『え……?』
なになに?一体何の騒ぎ?
「こないだアレ…ビデオ直してやったろ!アレでチャラでいいだろが!!」
「いいわけねーだろ!五ヶ月分の家賃だぞ!!大体あのビデオまた壊れて《鬼平犯科帳》コンプリート失敗しちまったわい!!」
「バカヤロー諦めんな!!きっとまた再放送するさ!!」
「んなこたァいいから家賃よこせっつーんだよ この天然パーマネント!!」
「んだコラァ お前に天然パーマの苦しみがわかるか!!」
『………』
な、なんだか…すっごいコト言ってる…!
二人の言い合いを目にして花は軽く放心してしまう。
―――カン、カン…。
『っ!?』
ふと聞こえた金属音に振り返れば、一人の眼鏡をかけた少年が階段を上がっていくのが目に入った。
『あ、あの……っ』
花は慌てて彼に駆け寄る。
「………」
すると彼は階段の踊り場でピタリと立ち止まった。
『!』
あ、気づいた?と思ったのもつかの間。
「ハァ〜〜〜」
重ーいため息が聞こえて、え?と少年を見上げると、彼は二階を見つめていて、花の存在には気づいていないようだった。
「またやってんのか」
ほんと、毎度毎度よくやるよ……。
少年は呆れたような目を彼ら二人に向ける。
まあ、金無いのなんて当たり前か…。
フリーターから心機一転、僕がこの人のもとで働き始めてからも、“万事屋”なんていかがわしい商売がそう儲かるわけもなく。
僕のじり貧の生活は相変わらずだ。
果たしてこのままあの男についていっていいものか。
「ちょっと……アンタらいい加減」
ギャーギャーと言い争う二人に向かって、ゲッソリした顔で少年が二人を止めようと口を開いた瞬間。
――――ぶわっ!!!
「「!!!!」」
着物の女の人に投げ飛ばされた銀髪の男の人が少年の上に降ってきた。
――――ドッスン!!
「ぎゃああああ!!!」
そのまま二人はゴロゴロと階段を転がって、ドスンッ!!と勢いよく地面にたたき付けられた。