long story

□第4話
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『でねでね、お登勢さん。その時夢に出てきた王子様が……』


「ちょっと銀時、何なんだいこの子」



カウンターに肘をついてうっとりと話す花をそのままに、お登勢はウンザリと銀時に問い掛ける。



「あー…スマン、ババア。そいつちょっと頭イカレてんだよ」


「はァ?どういう意味だい、そりゃあ」



眉を寄せて銀時を見ると、新八共々ぐったりとソファーに腰掛けているのが目に入る。



「なんだい、お前たち。そんなに憔悴しちまって…」


『ちょっとお登勢さん聞いてる?』



言いかけたお登勢の言葉を遮って花は唇を尖らせる。



「はいはい、聞いてるよ」



怠そうに向き直りタバコをくわえるお登勢に満足したのか、ニコッと天使のような笑顔を浮かべて花はまた語り出した。



「かれこれもう2時間は聞いてるっつーの」



プカプカと煙を吹かしながら忌ま忌ましげに舌打ちしてお登勢は花を見下ろす。


もちろん花はそれに気づいていない。



「まだまだ、まだまだですよお登勢さん」


「あァ?」


「俺たちは一晩中花の“王子様議談”聞かせ続けられたもんなァ…」


「ええ……寝ようとしたらチョップで無理矢理起こされますもんね…」


「………」



新八や銀時の言うことも、未だ自分の世界に浸って幸せそうに語る花を見ればあながち嘘とも思えず。


お登勢はひくりと顔を引き攣らせた。



「おかわりヨロシ?」


「………」



そして花の隣にはもう一人やっかいな小娘―――神楽が陣取っていて。


当たり前のように空になったお茶碗を突き出す。



「てめっ 何杯目だと思ってんだ。ウチは定食屋じゃねーんだっつーの。そんなに飯食いてーならファミレス行ってお子様ランチでも頼みな!!」


「ちゃらついたオカズに興味ない。たくあんでヨロシ」


「食う割には嗜好が地味だなオイ!!」



ビキビキビキ。


目に明らかにお登勢の額に青筋が浮かんでくる。


それに気づいていないのか、または気づいていながら知らんぷりをしているのか。


花は語り続け、神楽は食べつづける。



「てめーらっ!ここは酒と健全なエロをたしなむ店…親父の聖地スナックだって言ってんだろーがァ!!」



ブッチン。


ついに堪忍袋の緒がキレたお登勢の怒声が店中に響き渡った。


――――真夜中。


みんなが集まってるここは“スナックお登勢”である。
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