long story
□第3話
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「どーすんスか、生活費までひっぱがされて……」
新八がコポコポと湯呑みに熱いお茶を注ぎながら銀時に言う。
「今月の僕の給料、ちゃんと出るんでしょーね。頼みますよ、僕んちの家計だってキツいんだから」
新八の言葉に、椅子にだらし無くもたれかかっていた銀時はよっこらせ。と体勢を正すと。
「腎臓ってよォ、二つもあんのなんか邪魔じゃない?」
新八をジッと見つめて言う。
「売らんぞォォ!!何恐ろしー事考えてんだ!!」
―――――今日も朝一から下のスナックのママ、お登勢(おとせ)に家賃の巻き上げをくらい一文無しとなってしまった万事屋一行(いっこう)。
かと言ってそんな急に仕事なんて舞い込んでくるハズもなく、いつも通りダラダラかつ騒がしく怠惰な日常を送っていた。
『新八くん、朝からあんなに叫んでたら血圧高くなって倒れちゃうよ』
「心配ないヨ、花ちゃん。新八はいつもあんなアル。それにあいつにはツッコミしかないアルから、アレをとっちゃ新八には何も残らないネ」
『そういうものなの?』
「そうアル。あ、花ちゃんに酢コンブあげるヨ」
『わー、ありがとう!』
「おいソコォォ!!今何気に僕の悪口言ってなかった!?」
簡素なソファーの上では和気あいあいと酢コンブをしゃぶる神楽と花。
新八のツッコミなんか聞こえていない。
「まァそんなカリカリすんなや、新八。金はなァ、がっつく奴の所には入ってこねーもんさ」
机に肘をつき、ダラダラとテレビのリモコンを手に取る銀時。
「ウチ、姉上が今度はスナックで働き始めて、寝る間も惜しんで頑張ってるんスよ……」
「アリ?映りワリーな」
「ちょっと!きーてんの?」
新八の切ない身の上話をまったく聞くそぶりを見せず、銀時は砂嵐が流れるテレビをガンガンと殴っている。
ザザッ。
「オ……はいった」
なんとか映ったテレビの画面は、銀時の大好きな結野(けつの)アナがちょうどリポートしているところだった。
――――「現在謎の生物は新宿方面へ向かっていると思われます。ご近所にお住まいの片は速(すみ)やかに避難することを……」
リポートしている結野アナの背景には、壊れた家や煙など悲惨な光景が広がっていた。