long story
□第2話
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『っはーっ、こりゃたまげた』
王子様に貰った地図を頼りに街中を歩いていた花は、思わずオッサンのような声を出してしまう。
『この町は一体、何時代なの…?』
道行く人々は男性も女性も着物を着ていて、一見江戸時代に来たように思えるが。
自販機があったり、車…それもハイブリットカーが走ってたりするから違うような気もする。
それに何と言っても1番驚いたのが。
『何あれ……コスプレ?』
道行く人々に交じって、“人”ではなさそうな生物が行き交う。
やっぱりこの世界は不思議に満ちている。
案外すんなりと自分の置かれた状況に馴染んでしまっていた花は、興味津々といった様子で辺りを見回した。
『…そろそろだ』
王子様のくれた地図に赤い丸をされている目的地まで、あと少し。
花は期待に胸を膨らませながら、魔法の杖を軽く握り直した。
『万事屋(よろずや)……かぁ』
そんな胡散臭い商売をしてる人って、ほんとにいたんだ。
『どんな人たちがいるんだろう』
いろいろと妄想を膨らませている間に、いつの間にか目的地にたどり着いていた。
そこはボロそうな、お世辞にも『綺麗』とは言えない二階建ての建物だった。
『“スナックお登勢”…?』
あれ、間違えた?
花は不安になって再び手元の地図に視線を落とす。
いくらなんでも地図見ながら迷うなんて、それこそ有り得ないでしょう。
でもやっぱり道のりは間違えてなかったように思う。
花はもう一度店の名前を確認しようと目の前の建物を見上げた。
『………あ』
そして“スナックお登勢”と書かれた看板の上に、もうひとつ“万事屋銀ちゃん”と書かれた看板が雑に取り付けられているのを発見する。
『よかった、合ってた…』
間違えてたら、冗談なんかじゃなくて本当に大変なことになってたよ…。
花はホッと胸を撫で下ろす。
するとその時。
「知るかボケェェェ!!」
すごい怒声が聞こえてきた。
『――っ!!?』
驚いて花は声のした二階を見上げる。
そんな花の目に入ってきた光景は、着物姿の女の人の後ろ姿と、銀髪の青年だった。