long story

□第1話
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『ん、ぎゃっ!!!』



目を閉じたのはほんの一瞬だった。


だけど次の瞬間には花を取り巻く風は消えていて、勢いよく地面にたたき付けられた。



『いたた………』



強打した額をさすりながらムクリと起き上がる。



『何なのよ、一体……』



さすがは“最強女”と謳われていただけある。


おそらくどこかから落ちたのだろうが、花には傷ひとつ無い。



『んっとにもう、とんだ魔法の杖だね!』



さっきの竜巻のような強風が果たして杖によるものなのかはわからないけど。


花は服についた砂を払い落としながら立ち上がった。



『髪もボサボサ……って、あ。コスモス一個飛んじゃってる。また作らなきゃ……』



言いかけ、花は固まる。


上げた視線の先、花の目に入ったものは。



『…何、コレ………』



大きなお屋敷だった。


大きなお屋敷の大きな門の横には、“特別警察 真選組屯所”と書かれた札が張り付いていた。



『え?え?』



花は焦って辺りを見回すが、そこには初めて見る景色が広がっていた。



『………痛い』



頬っぺたをギューッと抓ってみると痛かったから、夢ではないらしい。



『ここ、どこ……?』



いくら目を擦っても、目の前にあるのは大きなお屋敷だけ。



『………』



“夢の世界へ連れてって”



『……まさか』



ひとつだけ心当たりがある花は、自分の手に握っている杖を見つめる。



『私があんなこと言ったから……』



王子様はともかく、“異世界”に飛ばされちゃったの?



『………』



よく小説や漫画である異世界トリップ的な?



『……いやいや、まさかね』



非現実的な妄想を振り払うように首を振り、花は“これは夢だ”と思い込むようにした。


でも夢にしてはあまりに鮮明だけど……。



『!』



だからそんなこと有り得ないって!



『ハハハー』



花は一人門の前で百面相しながら無理矢理自分を納得させた。



『ハハハハハハ………ふう』



とりあえず一人芝居していても仕方ない。


目の前にあるここは、運よくどうやら“警察”らしいし。


帰る道でも聞くとしよう…。



『はあ……』



小さくため息をつき、花は敷地の中に足を踏み入れた。
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