07/16の日記

18:57
浪漫?
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「父上がそう仰るのならば、私は従うまでです」

そうか、と。
目尻に深い皺を作りながら、涙までも浮かべて喜ぶ姿がとてつもなく憎らしい。

父上がこの里から都会である都へと降り立った時、お米を売り買いする商人に声を掛けられたと。
その商人は、父に連れ添う私を何度か見掛けた事があり、私を嫁に欲しいと、息子の嫁にと縁談を持ち掛けてきたと。
父上は始めこそ断っていたが、商人の息子を見て、話し、考えた末に縁談を了承したと。

笑える…いや、笑えないな。
私の考えも、答えも、想いも。
何もかもが無視だ。

一人、月夜に照らされる里を部屋から見ていたら夜回りだろう幼馴染みが提灯片手に歩いていた。
夜笛も、持っているんだろう。胸元をしきりに手で確認している。

「し……のめ」

幼馴染みには聞こえないほどの小さな声。

「しののめ」

本当に、小さな声。

「東雲…私っ…っ」

視界が滲み、目の前の先にいる幼馴染みである東雲が見えなくなった。

「ふ…ぅ、も…っ、や…ぅ」

視界を滲ます物が次から次へと溢れてきて、ましてや引き結ぶ唇からも嗚咽が溢れてしまう。
掌で口元を覆うも、漏れて…両手で押さえつけるようにしてみても嗚咽が漏れてしまう。

東雲には、見られたくない。聞かれたくない。

「しの、」
「どうかなさいましたか」
「っ!?」

驚いた。

どうして、私と貴方との距離は遠いもの。
だって、私は、建物の二階から。
貴方は建物の、建物よりもはるか先の、下で。

「私に隠れて泣くのならば、窓際に立たないことです。私には見えますよ」

そう言って、私の涙を指先で撫でてくれる。

あぁ…私は、嫁いだらもう、この手に触れてもらえなくなる。
あぁ…私は、嫁いだらもう、この声が聞けなくなる。
あぁ…あ、ぁ、あぁ!あぁ!あぁっ!

私は、貴方を殺して、私を殺したい。

死にたい。


ずっと、ずっと、ずっと書きたいと思っている話し。

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