長編小説

□赤ずきんとetc
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‘あの子等’はね、怖い恐い、コワイ化け物に喰われてしまったんだよ。

だからね、近付いてはいけないよ。

お前まで化け物に喰われてしまうから。





第1話





高校2年生の春。須崎あざみ(すざきあざみ)は今、大学に行くか就職するかで悩んでいた。理由は簡単、大卒か高卒かでは就ける職の幅が違うから。

人生の選択に迫られ切羽詰り、今日も担任と進路相談をしていたが納得のいく結果が出ず、余計に悩んでしまう。


「頭ン中がぐちゃぐちゃ、だ」


今の自分が何をやりたいのか、何になりたいのか、何もかも解らない中で周りからあーだこうだと口煩く言われるのが苦痛でしかたない。

息抜きにと放課後に立ち寄った図書室でフラフラと棚を見ていればふと、埃被った1冊の本――‘赤ずきん’を見付けた。

人差し指で本の角を引っ張り、手に取ると軽く叩くようにして埃を払う。

表紙は真っ赤で、真ん中辺りに金なのか銀なのか良く解らない、黒く変色している文字で赤ずきんと書かれている。裏表紙は何も書かれておらず、表紙同様真っ赤だ。


「これでいいや」


誰しも1度は読んだ事のある赤ずきんの本を持ち、日当たりのいい窓側の席に座った。

赤ずきんといえば頭の中に‘グリム’童話が浮かぶ。しかしこの本には著者等が書かれていない。不思議に思ったが気にせず、1行目を読み始めた。


――赤ずきんと呼ばれる女の子がお母さんにお使いを頼まれ、森の向こうのおばあさんの家へと向かう。

が、その途中で駄目だと言われていた寄り道をして1匹の狼に出遭う。

狼は赤ずきんのお使いの理由を知り、先回りをしておばあさんの家へ行き、家にいたおばあさんを食べてしまう。そしておばあさんの姿になり代わり、赤ずきんが来るのを待つ。

何も知らない赤ずきんがおばあさんの家に到着するとおばあさんに化けていた狼に食べられてしまう。

満腹になった狼が寝入っていた所を通りがかった猟師が気付き、狼の腹の中から2人を助け出す。

赤ずきんは言い付けを守らなかった自分を悔い、反省していい子になる。

おしまい。






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