第弐幕
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嗚呼、彼女はなんて麗しく
零れる溜息 少女は笑う
彼女は美しい 誰よりも
誰も同じ舞台に立たせやしない
彼女1人で十分だ
場所が変われど彼女は主役
多くの候補には目もくれず
彼女は静かに微笑んだ
少女は呆れたように笑うだけ
誰も彼も敵わない
そんな姫にどうして挑む
ほらほら王子達の目が変わったよ
姫達もそれに気がついた
さぁさぁ、どうぞ幕引きです
第二幕の始まりです
少女は嗤って駆け去った
___道化師の夢物語
合宿所につきました!
合宿所は跡部財閥経営の、所謂キャンプ施設。あ、キャンプ施設とはいっても、ちゃんとクーラーのついたロッジとかあったりするんですよ?ほら、小学生の時に修学旅行で泊まったような、なんとか少年自然の家のような宿泊施設がたくさん!まぁ、あれとは比べものにならないくらい、綺麗で立派なのだけれども。
実はプロのスポーツ選手とかがたまに利用するような場所らしく、いくら全国区とはいえ、たかが中学生の部活のために利用させていただくなんて、なんだか申し訳ないです。
でも、正直に言えば、こんな素晴らしいところで皆と過ごせるというのが楽しみな気持ちの方があったりするのです。
「よっしゃ、一番のりーっ」
だから、結衣のテンションが高いのも、仕方のないことなのです!!
「ちょっと、靴くらい揃えて」
「いいのいいの!ちゃんとあとでやるからっ!」
ひゃっほーいと掛け声をかけてスーツケースを壁に投げつけるように手放して、部屋のなかへと飛び込んだ。どんっと大きな音をたてて、隅っこにすっぽり収まったスーツケースに拍手。ナイスコントロール結衣!いぇーい!!
クルリと回って、一旦部屋を静かに眺める。外も良ければ中も良し。完璧です。
「本当綺麗だねっ!それに、思ってたよりも広いっ!!」
「......もう、はしゃぎすぎ」
「えへへ」
ため息をつく綾香にピースサインを送る。
「あ、靴並べてくれたんだね!ありがとう!!」
「次からはちゃんとしてよ」
「うん、もちろん!」
結衣は梯子を登りながら、綾香に笑いかけた。
「ねぇそれよりもさ、綾香!二段ベットだよ二段ベットっ!!」
「うん、見てわかる」
人が感動しているというのに、相変わらずの無感動。まぁ、彩香だしと結衣は気にせずニコニコと話を続ける。
「二段ベットといえば、やっぱ高いところがいいよねぇ〜。寝るなら結衣上がいいなっ」
「いいんじゃない?バカとなんとかは木に登るっていうし」
「え?」
「あ」
しまったという様子で顔を背ける綾香。ちょっと!?結衣は目を細めてじっと彩香を見つめる。
「ごめん、間違えた。なんとかと煙は高いところに登るだった」
「そうじゃないよね!?」
急いでベットの二段目から飛び降りて綾香の傍に着地し、肩をガクガクと揺らした。
「そこは否定してよー!!」
「えー、だって本当だしー」
「彩香のばかーー!」
*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*
それからすぐ、他の学校の方々もチラホラとやってきました。実は結衣、早く部屋の中が見たくて見たくて、解散の号令がかかってすぐに部屋に向かって一直線だったんですよね。だから一番乗りも当たり前。文句いいながらも、何気に結衣のペースに合わせてくれている彩香が可愛いです。
「なぁなぁ、一つ聞きたいんやけど、皆、お互いの名前ちゃんと覚えとる?」
ロッカーを使い、それぞれの荷物が片付いた頃合いを見計らって、そんな声が上がった。
結衣は待ってましたとばかりにベットから立ち上がり手を振る。
「はいはいっ!結衣覚えてるよっ」
あの個性豊かな自己紹介の中、マネージャーの名前だけは確実に覚えようと頑張っていたのだ。その努力を今こそ見せつけてやる!!
変な意気込みとともに、結衣は近くの人から手当たり次第に説明することにした。
「この子達が青春学園からのマネージャーさんで、竜崎咲乃ちゃんと、小坂田朋華ちゃん!」
「よろしくお願いします!」
「よ、よろしくお願いします」
「咲乃ったら緊張しすぎだって」
「だ、だってぇ〜…」
同じようにベットに腰掛けて話していた2人を先に紹介する。
緊張したように身を固めている三つ編みの子が咲乃ちゃんで、ニコニコと笑顔が素敵なツインテールの女の子が朋華ちゃん!初々しくて可愛い2人組なのです。
「それから、2人と同じく一年生の相沢遥ちゃん!六角中だったよね?」
「はい」
遥ちゃんはふわりと笑って、荷物を片付ける手を止めて、皆がいる側へと体を向けた。
「相沢です。皆さん今日からよろしくお願いします」
小さくて儚げで、ふんわりとした印象の女の子でした。
「でもって、こっちが四天宝寺の永峰小牧ちゃん、でしょ?」
「ピンポーン!偉い偉いよぉ覚えとったな!飴ちゃんやるで?」
「やった!ありがとう〜」.
笑顔が素敵で、元気のいい女の子。ノリがよくて、なんだか仲良くなれそうな気がします!
「えーと、あとは立海だよね!右から、麻美さん、愛菜さん、蘭さん!」
「よろしくね」「よろしく」「……」
ふわふわパーマの女の子が麻美さんで、つり目の茶髪ストレートが愛菜さん。蘭さんは彩香みたいに黒髪ストレートなんだけど、微笑みが絶えないっていうか、なんだろう。滝さんみたいなカンジ?なんというか、おしとやか、美人って言葉がすごく似合います。
「なんで、三人だけさん付けなの?」
「なんとなく!」
そして残すはあと2人だけとなりました!ニコニコと笑顔で、元いた位置に戻って、彩香にくっついた。
「でもって、氷帝の彩香と結衣です!一生懸命働くので、何卒よろしくお願いします!!」
「……よろしく」
よし、できた!結衣の記憶力もなかなか捨てたもんじゃないなと思った瞬間でした。
ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
それから少しばかり会話を交わして、話題はベットの陣取りの話です。うふふ、予想通り!なーんてね。うそうそ。むしろ結衣が仕向けました!だって、二段ベットで眠るなんて数少ない機会、逃してなるものか!ってやつですよ!!
「結衣絶対上ーっ!」
ハイハーイッと手を挙げて、元気よく告げる。そんな結衣を、綾香は冷たくたしなめた。
「結衣大人げない」
「大人げなくてもいいの!上で寝たいんだもん。あ、もしかして綾香も上で寝たいの??」
そう問いかけると、ため息で返された。全く、これだから最近の子は。せっかく合宿に来たのだからもっとテンションあげていかないと楽しくないよ?とは思うものの、テンションの高い彩香なんて想像が出来ないんですけどね。
あー、もしかして、結衣がテンション最初から飛ばしすぎなのかな?自重した方がいい??周りの様子から、いささか結衣が飛び抜けてテンション上がりっ放しなのはちゃんと自覚しています。
「せやったらウチは下でええよ。梯子登るん面倒やし」
「私は上がいいです」
「私はどっちでもいい」
「私もどちらでもいいので、先輩達に任せます」
そんなどうでもいいことを考えているうちに、小牧ちゃん、麻美さんがのんびりと告げた。他にも、携帯を弄りながら投げやりな愛奈さんとか、苦笑している遥ちゃんとか。うん、やっぱ結衣ははしゃぎすぎみたい。うー、なんだろう。皆もっとテンション上げたらいいのに。そればかりが不満な結衣でした。
「皆さん遠慮しなくてもいいですよ。どうせ結衣のわがままなんだし」
それから、追い打ちをかけたいのか、綾香はとても結衣に冷たい。そんなつれない態度やめてー!
「いいじゃん、結衣上で寝たいんだから。ねぇねぇ、桜乃ちゃんと朋華ちゃんはどうする?」
「えと、私はどっちでも......」
「はいはーい、私は上がいいでーすっ。桜乃も一緒に上で寝ようよ!」
朋華ちゃんの言葉にこれ幸いと、パンパンと手を鳴らした。
「よっしゃ!じゃあ決定!結衣と朋華ちゃん桜乃ちゃん、麻美さんは上。綾香、愛奈さん、小牧ちゃんと遥ちゃん蘭さんは下ね!」
いいもんいいもん。そっちがその気なら勝手に仕切ってやる!言っとくけど、イベントは楽しんだもん勝ちなんだからな!!
こんなことでグダグダするなんてバカらしいし、ぐちゃぐちゃ言ってるうちに、誰かが決めてしまうのが絶対早い。そう思っての判断でした。ちなみにずっと黙っていた綺麗なお姉さん蘭さんは勝手に下にしたよ?綾香と気があいそうだしね!
それじゃあ、きーまりっ♪と結衣が立ち上がると、綾香に袖を捕まれる。
「決まってない。あんた寝相悪いんだから、落ちるわよ」
「ひどっ!?まさかの断定ですか!?大丈夫だよ、絶対落ちないからさ、お願いします、綾香さん!」
本気で上で寝たいんです!結衣は両手を合わせて頼み込んだ。
「.......落ちたら、次の日から下だからね」
「やった!ふふふー、綾香も素直に上がいいって言えば良かったのに。ま、譲ったりはしないけどねー」
「やっぱあんた下で」
「わー!!うそうそごめんなさい!!綾香大好きだよっ、ありがとー!」
ぎゅうと力一杯抱き締める。すると、結衣の腕を珍しく彩香が抱きしめ返してくれたんだ。
それが嬉しくて、さらにギュッと抱きしめるのはご愛嬌。
きっと綾香は一緒に寝たかったんだと思う。だって、人見知りだもんね。だけど、それだとここにいる間苦労しちゃうじゃないですか。元々友達同士は離れていた方が、他の人たちとも仲良くなりやすいんですよ?
心の中で舌をだす。
ここにいる皆が氷帝のファンクラブの人達とは違うと思うけど、念には念を置いとくべきだと、結衣は思うのです。とにかく頑張れ!結衣が傍についてるから。そんな想いを込めながら結衣は彩香を抱きしめ続けるのでた。
そんなこんなで、合宿は始まります。
(そういえば、荷物置いたら早く行かなきゃ!広場集合だったよね!?)