短編
□断れへんねん【白石+忍足】
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断れへんねん
【四天宝寺:白石+謙也】
「白石〜!」
「おはよう、謙也」
イヤホン越しに聞こえた挨拶に顔をあげる。
謙也は斜めちょい前の席に荷物を置いて、俺の前へとやってきた。
それを見た白石は、片耳のイヤホンを外して、謙也を見上げた。
「なぁ、白石、飲み物買いにいかん!?」
「えぇ〜……」
あからさまに嫌な顔をする白石。
「なんやその顔!?」
「だって、俺、単語帳やっとるもん」
一時間目の英語の時間に単語テストがあるのだ。
20ページ以上にわたる単語の範囲を全く予習してなかったのだ。
朝の内に詰め込むしかないじゃないか。
「それに俺紅茶持ってきとるし」
机の上に置いていた水筒をぽんぽんと叩いた。
無駄なお金はあまり使いたくない。
「そこをなんとか!」
「えー」
白石が不満の声をあげているうちに、謙也は席に戻って財布を取ってきた。
「よし、行こうっ!」
服の裾をぐいぐい引っ張ってくる謙也。
「せや!
お金渡すから、ついでに俺の分も買ってきてや!」
「なんでそうなるんや!
お願いや、白石〜」
甘えてくる謙也。
あぁ、もう、仕方あらへんな。
「しゃーないな」
「よっしゃ!
さすが白石や!」
ため息を付きながら、鞄から財布を取り出して、百円を握る。
単語帳を閉じて、iPodを片付けた。
「はよ行くで!!」
「はいはい」
なんでやろな。
面倒やと思うとっても、いつも最後は頼みを聞いてまうんや。
他のヤツやったら断るとこやのに。
「ちゅーか、自動販売機、校外にしかあらへんやん」
「せやで?」
「うわ、面倒や!」
「あはは、堪忍な〜」
嫌味を並べてもほいほい流す謙也。
毎度毎度面倒やと思いつつも、結局はしゃーないって思ってまうんは……。
こいつの性格のおかげやろな。
なんか、聞いてやりたくなってまうねん。
「喉かわいて仕方なかってん」
「一人で勝ってこいよな」
だけど、やっぱり相手の意図通りになってもうたんはしゃくやったから、小突いてやるんや。
それが俺にできる小さな反抗。
甘え上手なお前には勝てへんわ。
2012/07/13 fry
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毎度あの子に甘いなとは思いつつ、やっぱり聞いちゃうんですよ。
うー!甘え上手な子はズルいです。