短編

□やめてください照れ死します
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「ときに黒子くん、映画は好きかね」

「どうしたんですか?急に」



休憩中も席を動かずに読書に勤しむ黒子くんマジ文学少年、素敵!
アホな体育会系女子の私には釣りあわないね、全く。うんうん。
あれ…自分で言って悲しくなってきた…。


このキラキラオーラが溢れだすイケメンは私の彼氏の黒子くん!バスケをしている姿に私が一目惚れしちゃって勢いで告白したらなんとオッケー!どういうことなの!でもやったね!

黒子くんはクールなイケメンだ、逆に私は授業中座ってるだけでも拷問のように感じるくらいのおてんばガールだ。
可愛く言ってみたけどただのうるさいバカです、はい。

黒子くんに私みたいなうるさいやつは似合わないんじゃないかなー、なんて考えたこともある。
ちなみにみんなにも釣りあわないってよく言われる。ちょっと悲しい。

でも一緒に帰るときにはさりげなく車道側を歩いてくれたり、手を繋いでくれたり…、紳士なんです。ホント。
それに休日にバスケ部の練習がないときはデートにも誘ってくれる。

私はおバカで単純な性格だからこれだけでも十分嬉しいんです!黒子くんが好きだからね!


そして今週の日曜日にまたデートの予定だ。
「なまえさんの行きたいところでいいですよ」なんて言われたので黒子くんマジ紳士!じゃなくて私は映画に誘った。

ここで冒頭のセリフに戻る。



「今やってる恋愛系のやつなんだけどね、ちょうどチケットが2枚あるから日曜日にどうかなあって!黒子くん恋愛物語とか嫌いかな?」

「いえ、好きですよ。それって小説が映画化されたものですよね?一度ボクもみたいと思っていたんです」

「ほんと!?じゃあそうしよっか!」



小説が映画化されたものかどうかは私にはわからないけどこう…、さりげなくフォロー入れてくれるとか黒子くんマジ紳士。何回言ってんだ私。
でも幸せすぎて溶けちゃいそう。



そして日曜日。わざわざ家まで黒子くんが迎えに来てくれて一緒に映画館へ行く。

道中は私はどうでもいいことをぺらぺらぺらぺら喋ると黒子くんが相槌を返してくれる。
黒子くんはあまり饒舌ではないからしゃべるのは私の役目!


そしてお昼を食べてから映画を観る。

余命3カ月の命しかない女の子の願いを最大限に叶えてあげようとする男の子、そんな2人のお話だった。
しかもラストは余命で女の子が死んでしまうのではなく、ある日の水族館デートした帰りに男の子が車にひかれそうになり女の子がそれを庇って死んでしまう、という悲恋に悲恋をぶっかけたような内容だった。

思わず涙。いい話、って言ったら不謹慎だけど…。悲しくて、でも素敵な話だった…。
最期の女の子のセリフがとても心に残った。


「あなたのために私の命をつかえるなんて、私は幸せ者だったよ。ありがとう」


私も黒子くんにこんなこと言ってみたいなー…、なんて。いや死にたいってわけではないですけども!これからもずっと一緒にいたいですけども!

なんて思いながら隣を見ると静かに涙を流す黒子くん。えっ、え。驚愕。

黒子くんは基本無表情で、クールで、ポーカーフェイスで、それで。
泣いてるところなんて、初めてみた。

すごく静かに、そしてあまりにも綺麗に泣くもんだから思わずじっと見てしまう。
私なんか泣くときには目は真っ赤にするし鼻水ダラダラ出るしお世辞にも綺麗なんて泣きかたなんて出来ないのに…。さすが黒子くん。

ずっと見ているのも失礼な気がしてす、とハンカチを差し出す。そこで黒子くんは自分が泣いていたことに初めて気がついたらしい。
無意識に、泣いてたんだ。



「黒子くんが映画とかで涙流すなんてちょっと意外だなあ」

「ボクも映画をみて泣いたのは初めてですよ」



へ、と間抜けな声を出す。
黒子くんは今まで感動的な映画をみたことなかったのかな?と考えたがそれはどうやら違うようだ。



「もしヒロインが、なまえさんだったらと思ったら…」



すごく辛くて、しらないうちに泣いてたみたいです。



これは、自惚れても、いいんです、よね?
私って黒子くんに愛されてるんですよね?

顔が真っ赤になっていくのを感じる。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい、嬉しい。


私の愛は一方通行じゃないって。



20130107 10000打ありがとうございました!

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