短編

□愛がちょっと不器用なだけ
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「あ…、きっるあくぅーん!!ぶふぉっ」



次の授業は移動教室で、クラスで仲のいい友達と一緒に科学教室へ向かっている途中。
廊下でゴンくんやクラピカくん、レオリオくんといつものおなじみメンバーで談笑しているキルアくんを発見して思わず飛びつく。もはや条件反射。

変人?失敬な、行動がちょっと大げさすぎるだけです!キルアくんが好きなだけなんです!

しかし私の声に反応したのか飛びつく私を華麗に避けるキルアくん。見事な反射神経ですね!おかげで私は顔面から壁に突っ込むハメに…、わりと痛い。
でも鼻血が出てないからセーフ!彼氏の前で鼻血たらすととかね、カッコ悪すぎていやだからね!うん。

そんなキルアくんは私の無事も確認せずに黙って教室へ戻って行ってしまった。
もう!照れ屋さんなんだから!



「なまえ大丈夫?」

「ありがと!全然平気だよー」

「じゃーさっさと行くよー」



キルアくんの代わりにゴンくんが心配してくれる。
いい子だなーほんと可愛いわー、と和んでいたら待ちくたびれたらしい友達が私のシャツの首根っこを掴んでずるずる引っ張りながら歩きだした。

ストップ!自分で歩きますから離して!私雑巾じゃないよ!

遠い目をしながらこっちを見ているゴンくん、クラピカくん、レオリオくんにとりあえず手をふって私は友人の手から逃れるために暴れた。
スカート汚れる!










「キルアーよかったの?」

「うっせ」



後から追ってきたゴンが聞いてくるが一蹴りする。
大体あいつは、周りの目ってのをもうちょっと気にしろよな…!しかもあんな飛び込み方したらパンツ見える、し…。
くっそ、イライラしてきた。なんでオレが。

オレの後ろをついてきているクラピカとレオリオがオレをちらちらみながら小さな声で話しているのにさらにイライラしたのでとりあえずレオリオだけ蹴っといた。ざまーみろ。



放課後、ゴンに帰ろーぜと誘ったらなまえと一緒に帰りなよ、と言われたのでしゃーなしにアイツのクラスまで行く。ゴンに言われたから仕方なくだ、仕方なく。

教室についたはいいがアイツの姿が見当たらない。いつも一緒にいるやつが偶然通りかかったので聞いてみるともう帰ったそうだ。
ちぇ、せっかく来てやったのに。

ならひとりで帰るかーと下足室で靴に履き替え外に出る。
はあー…、と溜息をつき歩いていくと校門になまえが立っているのが見えた。ちょっと嬉しくなって小走りで駆け寄る。

そこで気付いた、アイツがひとりじゃないことに。



「ほら、やっぱ来ないじゃん」

「いや、あの…ほんとそういうのやめてください…」

「いいじゃん、俺らと遊ぼうよ?退屈させないよー」



男2人に囲まれてるなまえ。オレに接するときとは全然違い縮こまっている。
この状況がわからないほどオレも馬鹿じゃない。

あーもうほんっとムカつく!

オレは嫌悪感を隠さずにそいつらにどんどん近づいて行く。
そいつらがなまえに手を伸ばしたときオレはなまえの肩をぐっと自分の方に引いた。
ぼすん、と音を立ててオレの胸に飛び込んでくるなまえ。



「オレのに何か用?」

「……っち…」



不機嫌を丸出しして睨むと舌打ちをして去っていく男たち。なーんだ、大したことないじゃん。

大丈夫か、と声をかけながらなまえの顔を覗き込むとその顔は真っ赤に染まっていて。
おいやめろ、オレまで恥ずかしくなってくるじゃねーか!
バッと体を離す。



「あ、の…ありがと、ね」

「……おう」



赤くなった顔を見られるのが恥ずかしくてさっさと歩きだすオレ。マジだせぇ…。

すると後ろから「キルアくん!」と呼びとめられた。振り向かずに立ち止まる。



「あの、一緒に帰らない…?」



オレが言えないことを言ってくれるなまえ。こういうのは普通男が言うもんなんだよな…?と考えて慌てて頭をふる。

今のオレはこれが精一杯なんだ。

ふり返って手を差し出す。しかしキョトンと不思議そうな顔をするなまえ。
あーもー!だから!



「手!」

「…へ?」

「…繋がねーの、かよ」

「あ、…う、ううん!繋ぐ繋ぐ!」



ぱああと嬉しそうに顔を綻ばせ手を繋いできた。その手を離れないように、離さない様にギュっと握る。

繋がった方の手がとても暖かった。



20130107 10000打ありがとうございました!

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