楽観的で能天気な私は

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「……なんでお前がここにいるんだよ」

「んんーと……森の妖精さんがあそこまで…ごめん嘘、シルバさんとは昔ちょっとしたことで知り合ったんです」



私が言い訳しようとしたら睨んできたので慌てて本当のことを言う。
ちょっとしたお茶目じゃん!そんな睨まなくてもいいじゃん!怖いわ!



「その、お前も、お前ん家も」



暗殺一家とか、なの?

なんて少し遠慮気味に聞いてくるキルアくん。どうして急にそんな発想…とか思ったけどよく考えれば普通はシルバさんと接点もつなんてないからねー。
私がそういう環境で、キルアくんと同じような環境で、育ったのかもと考えたのかも知れない。



「いんや、家は神社だった」

「じんじゃ…?」

「そう、稲荷神を祀ってるの」

「はあ…?」



神社とか稲荷神とかわからないかなー、と思いながらも一応答えておく。
この世界の、ジャポンにも神社とかあるなら行ってみたいなーなんて思った。閑話休題。


キルアくんの部屋に行って準備する姿を後ろからみる。
小さい背中、まだまだ子どもなのに。
色んなもの、背負っちゃってるんだよなあ。

気付いたらそ、と後ろからキルアくんを抱きしめていた。



「ごめんね、ごめんねキルアくん」

「は…、な、何が、だよ」



そのままの状態でキルアくんの背中に額を押しつけ、話かける。
キルアくんが私を振り払ったりしなかったのが何よりの救いです!!暗殺者なので背後からの不意打ちは振り払われるかと!

これが私だったから、とかの理由だとさらに嬉しいんですけどもね。なんて。



「あのとき、最終試験のとき、助けてあげられなくてごめんねぇ」

「いや、オレのほうこそ…お前のこと、見捨てるよう、な」

「ううんいいの、大丈夫だよ、私わかってるよ。ちゃーんとわかってるからねー」



キルアくんの言葉を遮る。
そんなこと思わなくていいんだよ、って。
キルアくんが優しい子だってちゃんとわかってるんだよ、って。

そう伝えたくて。


でもキルアくんがそう思ってるなら、友達になるところからやり直そうか。


キルアくんの肩をガシッと掴んでこちらに向ける。
向かい合った状態で私は手を差し出した。



「あのね、私キルアくんこと大好きだよ。だからね、」



私と友達になってくれませんか?


キョトンとした顔をするキルアくんを見て思わず顔が綻んだ。ふふ、キルアくんってば間抜けな顔ー!



「…あり、がと」



おずおずと私の手を握るキルアくん。
それだけで嬉しくて、ここに来てよかったなあって改めて思えた。

これからも一緒にいたい、とも。



キルアくんの準備を終えて一緒に執事用の別館へと向かう。

私はちゃんとした入口への行き方なんて知らないからキルアくんに黙ってついて行った。

さあ門だ、外へ出よう!としたとき私達が開けた訳じゃないのに門が開いてままんとカルトちゃんが出てきた。

しまったー!わーすれーてたー!



「キル、無駄よ、4人は帰ったわ。独房に戻りなさい」

「残念!私はここにいますけどね!!」



どうやらキルアくんの陰で私が見えなかったらしい。私が出ていくと心底ウザそうな顔をされた。ひどい…。



「オレ、行くよ。ユイと一緒に」

「いい加減にしなさい!キル!」



ままんがヒステリックに叫び、キルアくんに向かって手を伸ばすが途中で止めた。
キルアくんが、ままんを睨んだからだ。



「どけよ」



道をす、と開けるままん。
キルアくんは私の手をとり、ままんとカルトちゃんなんて気にも留めずに歩きだした。私もしっかりとその手を握り返す。


キルアくんが本気でここに帰ろうと思わない限りは、もうキルアくんは返してあげないからね、シルバさん。

地の果てまで行ってもキルアくんの生きられる場所なんてない?シルバさんの息子だから必ずゾルディック家に帰ってくる?
バカげたこと考えてると痛い目みるからね。



キルアくんの居場所は私が作る、絶対に、守るんだ。

20130112

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