楽観的で能天気な私は

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Q.自分の世界へ帰る手掛かりを探すために主人公たちと関わりたいが夢小説でよくみられる「私は彼らを見殺しになんたらかんたら」を避けるためにはどうすればいいか。

A.情がわくほど仲良くならなければいい。=適度な距離を保つ!



って出来れば誰も苦労しませんよねー、オタクって残酷だねーうんうん。
マンガ読んでる時点でもう情とかありまくり出来まくりだもんねー困った困った。

なんて、試験会場についたはいいもののやることがなくて暇だった私はひとり漫才を頭の中で繰り広げていた。


私の番号は111番、とても覚えやすい数字だ。きっと4次試験の時不利になるんだろうなーなんて考える。

それにキルアくんは99番だからもう来てるはずなんだけども…。そう思って辺りを見るが見つからない。原因は私の背が低いことと周りのおっさんたちの背が高いこと!
まだ何も始まってないのに!汗臭くて!嫌になる!!


こんなことを考えていてもイライラするだけだから他のこと…、ゴンくんたちと接触する場面を考えてみる。

ううーん…同い年くらいの女の子みつけたらゴンくんなら興味もって話しかけてくるんじゃね…?うん、きっとそうだ、いけるいける、他人任せだけどゴンくんならきっとそうするよね。
そこからきっと仲良くなれるよね、そうしよう!と自分の中でひとつの結論が出た時やあ、と人のよさそうな笑みを浮かべながらトンパさんが話かけてきた。

出たよー新人潰しのトンパさんだよー話かけられちゃったよーやだー。



「やあ、おまいさん新人だろ?」

「(スルーだスルー、私は空気になる)」

「俺はトンパ!ここの常連だからわからないことがあったら何でも聞いてくれ!」

「(スルー一番、ドライブスルー…マック行きたいなあ)」

「名前教えてくれよ」

「(ファーストフードってたまに恋しくなるよね)」

「………チッ」

「(私マックのポテト好きなんだよねポテト、シェイクはモスのほうが好きなんだけど、コーヒーシェイクが恋しい…この世界にもあるのかな…)」

「ま、まあこれはお近づきの印と思ってもらってくれよ!」

「へ、あ、あの!私いりませんから…って、」



何がお近づきの印なんだか、なんて思いながら押しつけられたジュースを見る。
飲んだら絶対お腹壊すし…適当に置いとけばいいかな…。でも他の受験者の人が飲んじゃうといけないしー…いやそんな馬鹿いないか。

と、ひとりうんうん唸ってたとき「それ、ちょーだい」といって話しかけられた。
誰だこんなの欲しがる馬鹿は!とか思って前を見るとそこにいたのはキルアくんだった。

…え?キルアくんだった。大事なので2回言ってみました。



「こ、これ…?」

「そっ、それ」

「でもこれ下剤入ってるよ?」

「なーんだ、気付いてたんだ」



知らずに飲んで死んだら可哀想だなーって思って飲んであげようかと思ったのに。

意外そうな顔をしながらそういうキルアくん。…え?この子こんな優しい子……でしたね!はい!でも初対面の私に話かけてくれるなんて、しかも心配してくれてたなんて。
嬉しい、なあ。



「わざわざありがと、優しいのね」

「は!?別に、オレは、」

「私はユイ、君の名前教えて?」



あたふたしている彼に自己紹介をし、自己紹介を促す。
キルア、と答えてくれた彼になぜか嬉しくなってキルアくんかあ…、と名前を復唱する。
まさかしょっぱなからこんなイベントに出会えるなんて思ってなかった。



「ありがとねキルアくん、お互いガンバろー」

「ん、ああそうだな」



そう言って手を振って別れる。スケボーの子と一緒に走るのは大変そうですからね…。
それにまた、きっと話せるし。

よーし幸先いいし、頑張るぞー!ぐっと意気込んでいたらいきなり「ジリリリリ」と冬の朝の目覚ましのように耳障りな音が聞えてきた。やっと試験開始、か。

先頭を走る…というか歩くサトツさんについて行く。
私なんかの持久力でも大丈夫かなあ、なんて心配しつつゴンくんたちやキルアくんの姿も見えないのでとりあえず自分のスピードで走ることにした。
私がガキだからか周りの視線が痛い。とても痛い。だが気にしない、私は空気の一部ですから。私は貝じゃなくて空気になりたい。


しばらく走っていると私の少し前から子どもらしい高い声できゃっきゃ騒ぐ声が聞えてくる。これがきっとゴンくんたちなんだろうなあ、なんて思いつつも話しかけられないチキン野郎な私はそのままひとりで走り続けた。
ぼっちつら……。

なんてしょげてたらいつの間にか階段まで来ていて、さらに出口まで来ていた。無意識!
やったね私、常人じゃないほどの持久力が身についている気がするよ。ちょっと怖い。



「ヌメーレ湿原、通称“詐欺師の塒”。二次試験会場へはここを通って行かねばなりません。この湿原にしかいない珍奇な動物達、その多くが人間をもあざむいて食糧にしようとする狡猾で貪欲な生き物です。十分注意してついて来てください。騙されると死にますよ」



もうすでにグルルルとか俺威嚇してまっせーみたいな声聞えてるじゃないですかやだー!

20121223

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