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□チョコレート※
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チョコレートの甘い香りの中に吐き出された欲望の香りが混じる。瞳が虚ろに漂う御剣に巌徒が口付け、室内よりも濃い甘い香りと青臭さが口腔内に広がり、柳眉がよる。何より自分の味は好きではない。それを知っていてなお御剣が嫌がるのを見て悦を浮かべる巌徒は救いようがないと思う。そしてそれを容認している自分もまた、相当のものだろう。

「ねえ、御剣ちゃん・・・・・・・」

散々口腔内を我が物顔で荒し回り、絡められた舌が擦られ、痺れを訴えかけた頃にやっと開放する気になったのか、巌徒が呼びかける。吐精後の気だるさと舌の痺れから体躯を僅かに起こし「何だろうか」と問いかける。

「他にもいろんな味があるみたいなんだよね。だから今度は、ほら、御剣ちゃんの好きな味で試してみるってのは、どうよ。これ」

ちらり、と自分の股間を指差し御剣に物言いたげな視線を送ってくる。脱力してベッドに沈む。今巌徒がしたことを己にしろというのか、と柳眉がよりヒクリ、と口元が引くつく。アレの味が好きではないと知っているはずなのに、否、だからこそ巌徒は楽しげに提案する。きっと巌徒の中では提案と言う名の決定事項。抵抗して被害を広げるより早いうちに被害拡大を阻止したほうが賢明だ。
肺の中身を全て吐き出す程深く吐息する。次いで、巌徒の首を捉えて引き寄せ、口付ける。それが答えだ。どうせ自分は巌徒に甘いのだから。


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