無音の歌姫 .

□許
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目が慣れるのは早い。
忍だからだということもあり、小さい頃から暗いところで過ごしてきたことが多かったからかもしれない。


暗い路地裏に引きずり込まれるように私は腕をすごい力で引かれ、気づけば数人の人間に囲まれていた。




見えてくると、その人間はほとんどが上忍の女性たちだった。


相手は6人。

得意の長刀もオカリナも持っていない私は、今クナイしか持ち歩いていなかった。

なんとも無用心なんだろうか、自分は。





まぁ、まだ闘うと決まった訳ではない。


話を聞いてあげるのが大事だ。


って、サイから借りた本に書いてあった。




『あの、何か』

「とぼけないでよ」

『いや、とぼけているわけでは・・・』



素っ頓狂な声を上げると、女の人は更にイラだったように私の目の前に歩を進めた。





『・・・・・・・あ、カカシのことか』





忘れてた。
焼肉がおいしかったから、つい。




もとからどこか抜けた性格だとは思っていたが、少しでも自分の危険を忘れていたとは。





思い出したように言った私に更に腹を立てたのか、目の前の女の人は私の胸倉を掴み上げた。


身長が私の方が小さいこともあり、爪先立ちになってしまった。


苦しいです。



『あの・・・、苦しいんだけど』

「もうカカシさんに近づかないで」

『人の話聞いてる?』

「約束したら、今日は何もしないわ」

『今日は、ってことは明日はするのか?』




よく、意味が分からないのだが。

約束しても、今日までの期限の約束じゃあこっちだって困るじゃないか。






まぁどちらにせよ・・・






『カカシから離れるつもりはない』






女の人の目を見て言うと、怒り狂ったように頬を殴られた。




狭い路地裏であるこの場所で思い切り殴られたら壁にぶつからないほうがおかしい。


案の定後ろにあった壁に肩と顔の半分を思い切りぶつけてしまった。


運悪く目にほこりが入りその場に私は崩れ落ちた。




『いったぁ・・・・』

「どこの奴かも分からないアンタがなんでこの里にいるのよ。しかもあのカカシさんと仲良くなっちゃって。調子に乗らないことね」

『いたた・・・、目に埃が・・・』

「聞いてるの!?」



目を擦っている私に再び飛び掛ろうとする女の人が見えた。





『ッ・・・』




髪を掴まれた。
殺されはしないかもしれない。

けど、抵抗をするつもりもない。


だって、私を恨んでいる人なんて、いっぱいいて。

殺されるときは大人しく殺されようと決めたから。


悲しんでくれる人もいるかもしれない。

カカシなら、どう思うだろう。
私が死んだら、悲しんでくれるかな。




こんな状況で、こんなことを考える余裕がよくあるなと、自分でも感心する。




あぁ、明日髪がなかったらどうしよう。
まぁ坊主でもいいかな。
ちょうど髪を切ろうと思っていたし。
あ、ハゲたら切る髪もなくなるか。




「約束出来る?」




嫌でもその女と目が合う。

あぁ、この人はほんとにカカシのことが好きなんだな。


だから、こんなにも怒ってる。
カカシは、たくさんの人から信頼され、愛されてる。





『私が気に入らないなら、好きなだけ殴ればいい』

「な、何言ってんのアンタ・・!?」

『任務以外は、私は人を傷つけるつもりはない』

「ッ・・」




少し躊躇った後、女達は一斉に拳を振り上げた。





『もういいのか?』

「あ、アンタおかしいわよ!!気持ち悪い!!」





口々に何かを言いながら女達は去っていった。
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