無音の歌姫 .

□試
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「沙雪!!」



やっと最上階まで上りきり、ナルトは思い切りドアを壊した。



中には、甘ったるい香りに包まれ、俺とナルトは思わず口と鼻を覆った。




「なんだってばよ、この匂い・・・」

「あまり吸うなよ。毒の霧だ」

「でも、なんか体が痺れてきたってば・・・」

「・・・・」



ナルトと同じく、指先から徐々に痺れが回ってきた。



早く始末しないとな。




奥に人影が見えた。

長刀・・・・?




コチラに歩み寄ってくるその人影は、だんだんと顔がはっきりと見えてきた。




「沙雪・・・・?」

『・・・・・』




ナルトの足取りがおぼつかない。

俺は口布をしてる分毒が回るのが遅いのかもしれない。



それにしても、こんなに早く毒が回るとは・・・



ナルトの様子が気になり、気を取られていたのか沙雪の動きに気づかなかった。


ヒュッと振り下ろされた長刀は、ナルト目掛け、一直線に下ろされた。




「ナルト!!!」

「!?」



ギリギリのところでナルトを小脇に抱えて部屋の外へと飛び退けた。





「・・どうやら、ただでは返してもらえないみたいだねェ」

「すまねぇ、カカシ先生・・」

「ん。ナルト、螺旋丸いける?」

「おう!!!」




ナルトは分身を出し、螺旋丸を作り出した。



「そのまま部屋に突っ込むぞ」

「言われなくてもそのつもりだってばよ!」



ナルトの1歩後ろから部屋の中に飛び込む。



ナルトの前に再び沙雪が立ちはだかる。





「カカシ先生、沙雪は頼んだ!!」

「あぁ!」



俺は沙雪とナルトの間に入り込み、長刀を持っている沙雪の右腕を床に押さえつけた。


その隙にナルトは部屋の奥に姿を消していった。


毒の霧でナルトが見えなくなる。




俺の目の前には虚ろな目の沙雪。
信じられないほどの力が腕に込められ、男の俺でも抑えるのが難しい。




霧が濃すぎるのか、部屋が広いのか、ナルトの姿が全く見えない。

ただ、大きな音と、ナルトのあの大声だけが聞こえる。


見えるのは、押さえつけている沙雪と冷たく堅い床だけ。



部屋の出口は見えているのに、この霧が出て行っている風には見えない。

この部屋だけに留まるようにしてあるのか・・・




「沙雪、目覚ませ」

『・・・』



呼びかけても、返事はなく、虚ろな目で俺を見上げるだけ。


やはり、さっきの傀儡たちを操っていた本体を潰さないと駄目か。



ナルトはどうなってる?

さっきから、本体の声のようなものが一切聞こえない。




周りを見渡しても、霧が薄くなっている気配もなく、人影もない。



「木の葉の忍も、この程度か」

「!?」

「先生後ろだってば!!」



間一髪の所で避けたが、沙雪から手を離してしまった。


だが、どうやら本体を見つけたようだ。


隣には少しだけ息が上がっているナルトがいた。


額当てに手をかけ、ぐいと上に押し上げる。

右目が開かれ、見えにくかった部屋が鮮明に見えてくる。




「あいつをやればいいわけネ」

「さっきみたいに傀儡を使ってくるってば。ただ、スピードはそれほど早くないからそれを狙えば・・」

「ナルトも言うようになったねェ」



相手の特徴を細々と口にしたナルトは、以前と違って頭を使うようになったと少し感心しながら思わず笑ってしまった。



「笑ってる場合じゃないってばカカシ先生!!」

「そうだったね、じゃ、行くよナルト」

「おうってばよ!!」



目の前の二人に向かって走り出すと、
真っ先に動いたのは沙雪だった。

トンと床を蹴るだけで爆発音に近い金属がぶつかる音が部屋の中に響く。

その影響で大きな風が出来、俺と沙雪の周りにあった霧が吹き飛んだ。



「それを向ける相手、選んだほうがいいヨ」




瞬間、沙雪の懐にナルトの蹴りが容赦なく当てられる。





その衝撃で、沙雪は壁に打ち付けられずるずると床に崩れ落ちた。




「ちょっとナルト、強すぎるよ」

「ご、ごめんってば・・・」

「後でちゃんと謝るんだよ」

「はい・・・」

「後なんかねぇよ。お前達はここで死ぬんだからなぁ!!」



そう男が言ったと同時に、倒れたはずの沙雪がむくりと起き上がった。

そう、それは人形と間違えるような、そんな動きをしながら沙雪は再び長刀を構えて俺たちに向かってきた。
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