RED LOVER .

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「紗雪が決めたことなら、俺は何も言わない」

「ありがとう、お兄ちゃん・・・」




次の日、兄は仕事が休みということで家に来てもらった。
そして昨日決めたことを打ち明けた。

反対されると思っていたけど、兄は止めることもせずに了承した。


「・・・母さんがいなくなってから、少しは考えていたことだ」


なんで反対しないの、と問う前に兄は重たそうに口を開く。


「母さんは紗雪を頼んだと言っていたが、いつかは紗雪も、ってな」

「・・・お兄ちゃんにはいっぱい助けてもらった。けど」

「いい。お前が決めたことなら、それでいい」


切なげに微笑む兄に、わたしは泣きそうになるのを我慢する。
きっとこの世界を離れたら、もう二度と会えないのだろう。

それを覚悟したうえでのこと。


「・・・まだ、言っていなかったことがある」

「え・・・?」

「お前の母親のことでだ」


なんだろう・・・

空気の流れが止まったように緊張が走る。


「・・・もし、紗雪が自分でこの世界を離れると決めたときは、これを渡してほしい、と」

「・・・紙・・・?」

「よく分からないが、あっちの世界で役に立つらしい」


渡されたのは、一枚の小さな紙切れ。
その端には人の名前だろうか。


【Avril】


筆記体で書かれた流れるような文字。
それを読んだのは、キッドだった。


「キッド、読めるの・・・?」

「名前だろ、これ。普通に読める」

「わたし英語苦手」

「・・・・・・・・・」


キッドは呆れたような顔をしたが、すぐに表情を戻した。


「そりゃビブルカードだ」

「ビブルカードって?」

「俺の世界じゃ、それは持ち主の居場所を示す」


要するに、お前の母親の居場所が分かるってことだ、とキッドは続けた。
お母さんに、会える?


「そうなのか。ならちょうどいい」

「・・・?」

「母さんに、会って話をしなさい。そうすれば、キッドがこの世界に来た理由も分かるはずだ」

「・・・うん」

「キッドが帰るのは明日だったよな」

「あぁ、話通りに行けばな」

「なら明日も来るよ。大事な妹との別れだ」


今日の兄は、哀しそうな笑顔ばかりだ。
だからだろうか。


「今日は、3人でお出掛けしよう!!」

「「は?」」


最後の、思い出にと思った。




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