長編
□紅き飴玉の鎖
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紅が揺れた。
あの飴玉と同じ色のピアスは、鎖に吊られ彼の右耳の下で揺れる。
「何を見ている?」
あの飴玉と同じ色をした瞳は、欲望に揺れる。
「……」
あの飴玉と同じ色をした螺旋は、彼の胸元で揺れる。
「……貴方の色、でしょうか」
感情の揺れを感じさせない声は、ゆっくり彼の問いに答える。
「お前が、か?」
彼の喉は音を立て、笑う。
「感じている、が正しいですね」
その言葉に切れ長の美しい瞳が細められた。
彼の鼻先が彼女の首筋に掛かる髪を払い、埋ずめられる。
「……いいか?」
形ばかりの問いかけで、彼女が抵抗しないことを確かめる。
首筋に彼の熱い舌が這い、何かを探す。
ぴたりと止まり、舌の代わりに固く鋭いものが触れる。
「……っ!」
一瞬の痛みの悲鳴を殺す。跳ねた体は彼の腕によって押さえられる。
耳に響く水音。
存分に彼女を感じ、ゆっくりと離れて行く。
古城の主は満足そうに笑い、その傷口をするりと撫でる。
「次は……」
あの飴玉と同じ色をした雫が、彼の牙で揺れる。
「どうして欲しい……?」