守り星

□05
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「ボス!」

大慌てで走って来た部下の一人を、九代目は訝しげに見た。

「どうかしたのかい?」

「ザ、ザンザス様が部屋で暴れて・・・!」

その報告に九代目はザンザスとジーナがいる部屋に急いだ。

「九代目!」

部屋の周りには二人の世話がかりに命じたものや、メイド達が集まっている。

「どうなっている?」

「はい、キア様に会わせろと暴れていらっしゃって・・・・今、オッタビオ様が止めてらっしゃいます。」

「そうかい、わかったよ。」

覚悟を決め、九代目は扉を開けた。

「・・・・これは酷い。」

部屋の中はまるで嵐が通り過ぎたかのように散らかっていた。
家具の多くはひっくり返り、壊れ、カーテンなどの布性の物は切り刻まれていた。
部屋の真ん中ではザンザスとオッタビオがぼろぼろの姿で言い争っている。

「キアに会わせろ!」

「・・・・キア様は今、絶対安静です。会わせる訳にはいきません。」

その状況を部屋のすみでジーナが楽しげに見物していた。

「ザンザス・・・・」

その声で、九代目が部屋に入って来た事に気づいたのかオッタビオとザンザスは扉に目を向けた。

「ボス・・・・」

オッタビオは九代目に向かって深々と礼をした。

「親父!!」

ザンザスは九代目に抱き着き、鳴き始めた。

「キ、キアはどうなったんだ!?会わせてくれよ!」

「ザンザス、落ち着きなさい。」

膝をつき、九代目はザンザスの瞳を覗き込んだ。
その瞳には九代目が知らないひどく苛烈な感情達。
怒り、悲しみ、戸惑い、不安。

「お、俺のせいなんだ。俺が、俺が拐われなんかしなきゃあ・・・・」

「大丈夫、泣かなくていい。」

そう言いながら、九代目はザンザスを興味深く観察していた。

ザンザスという子供は跡継ぎという立場のせいか、傲慢さが目についていた。
が、今のザンザスはどうだろう。たった一人のために、涙まで流している。

(キアを二人に会わせたのは、正解だったんだろうか?)

「キアなら先程目を覚ましたよ。」

「なら、会わせてくれ!」

「いや、目は覚ましたんだが直ぐにまた、眠ってしまったんだ。」

「でも、顔を見るぐらい良いだろ!?」

その言葉に九代目は静かに首を振った。

「いや、駄目だよ。このままだと、ザンザス、君の方が倒れてしまう。」

「俺は・・・・!」

「ザン。」

いつの間にか、横にジーナが立っていた。

「ザン、もしザンまで倒れてしまったらキアにまた、不安をかけてちゃうよ。それはザンも望む事じゃないでしょう?」

ザンザスは黙りこみ、首を小さく横に振った。

「よし、決まったね。今日は早くご飯食べて、寝ちゃお。」

ジーナはザンザスの手を掴むと、部屋を出ていった。

「じゃあね、お父さん。」

「ああ、じゃあね。」

二人を見送った九代目はまた、溜め息を吐いた。
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