守り星
□05
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(ここ、どこだろう?)
何処までも続く深い闇の中、キアは一人佇んでいた。
足元が無いような、あやふやな感覚にキアは首をかしげた。
「ここは何処でもないよ。」
後ろから聞こえた声に反応し、キアが振り向くと女が一人立っていた。
「強いて言うなら、私の心が作り出した世界かな?」
冴えざえとした冷たく整った顔に柔らかな微笑みを湛えている。
月の様な輝く銀の髪は腰まで垂らされ、こちらを見つめる瞳は光を固めたような金色だった。
おどけた声は、ひどく楽しげに聞こえた。
「?どういうことだ。二重人格みたいなもの?」
「 いえ、違いますよ。私はあくまでも貴方とは全く別の一個人ですよ。」
そういうと、女は口元をゆるりと上げた。
「けれど、なかなか興味深いことになりましたね。まさか、命をかけるとはね。」
くつくつと愉快そうな笑いに、キアはまた首をかしげた。
「何をいってるの?」
不思議そうなキアを見て、女は笑み
を深くした。
「いえ、実は貴方に対してとあるテストをしたんです。」
「テストってなんの?」
「それについては残念ながら言えないんですが、貴方は見事合格です。」
女はそういうと、キアにゆっくりと近づいて来た。
「手を。」
キアは言われるがままに、手を差し出した。
「いい子ですね。」
女はキアの手に指輪を一つ転がした。星の模様が彫りこまれたそれにキアは見覚えがあった。
「これは?」
「差し上げます。貴方には必要になるものですから。それについても残念ながら言えません。たった一つ言えるには、貴方は選ばれてしまったということです。」
そういう女は微笑んでいた。哀れんでいるような、安心しているような、喜んでいるような、悲しんでいるような、沢山の感情が要り混ざった笑みだった。
「指輪の事誰にもいってはいけません。」
「誰にも?」
「ええ、たった一人を覗いては。その人も時が来れば貴方の前に現れます。」
「・・・・何で言うこと聞かなくちゃいけないんだ。」
いきなり変な場所に連れてきて、命令してきた女をキアは警戒していた。
「貴方はザンザス君のこと好きですか?」
突然の質問にキアは戸惑ったが、素直に答えた。
「ああ、好きさ。意地っ張りだったり面倒くさいことも有るけど、素直だったり努力家だったりもすむから。」
それに、とキアは笑った。
「それに、私ザンザスの笑顔すっごい好きだから!」
満面の笑みでの言葉に、女はまた微笑んだ。
それは先程とは違う、ただ優しいだけの笑み。
「これから彼は信じられない程辛い目に遭います。この出来事は彼を守るために必要なことなんです。」
「ザ、ザンザスになにが起こるんだ!?」
「・・・・そろそろ時間ですね。もう帰りなさい。」
そして、キアの意識はどんどん薄れていく。
「ま、まだ、聞きたい事が・・・・」
「起きてしまえば、ここでの出来事は忘れてしまうでしょう。けれど、またいつかきっと出会う。なぜなら・・」
貴方は確かに選ばれてしまったんですから。
その声と共にキアの意識は闇に落ちた。