セカコイ リクエスト小説

□お願い 触れて 帰ってきて
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つかれた。





いや、ほんとどっと疲れた。


木佐さんからはそのやる気逆にひくわーといわれた(さりげなくひどい)



仕方ないじゃないか。


だって高野さんに明日会えないんだと思うと
仕事で紛らわすしかなくて
一人になるとやっぱりどこか

うん

なんかこう

ぽっかり…。










だめだ  おかしいな




去年は再会自体がありえなかったのに
仕事で毎日顔あわせてるせいで
居ないと変みたいな感覚が染み付いてる。















そんな感覚邪魔だ








だって寂しさを増幅させるだけだ。







「…本、返しにいくか…」


俺は皆に知らせて

会社を出る。お疲れ様ーと飛び交う声

本当、やっと人間に返れる瞬間だよな。


…高野さん。


せっかく高野さんと一緒のを(こっそり)借りたのに
仕事で忙しくて感想は言い合えなかったな


「…」

そう思ってサラリーマンの横を通り過ぎ
ビルの鏡にうつる俺の顔は かなりしょげていた。


捨てられた子犬か! きもい!


そう思って眉間にしわをよせる


そうだ それでいい これが俺だ



本を読む趣味は昔とかわってはいなかった
仕事の効率のいい高野さんは
暇をみては意外と読んでいる。
それで
他の人と感想を言い合ってるのを見て
高野さんにも仕事上仲間が増えたから当たり前なんだろうなと俺はこの間なんとなく思った。
高野さんは昔とくらべもう一人じゃない

だから俺じゃなくてもいいじゃないか
とは思う。

彼のいう『好き』はさすがに本気なんだろうけど





考えたらキリがないか。


俺だって好きだけど

互いに理解はできそうにない。



もどかしいが これが俺たちの愛の形なんだろうし。








並べられた本の香り
俺は我が家に帰ったように見回した。

天井の窓からは本を悪くさせない程度の
細やかな月の光が筒となって見下ろしている。


白いタイルは滑らかにしきつめられ

創立何十年の図書館を深く彩る


ああ


やっぱ幻想的だ。



ずっとここに居たいー











「やっぱ運命だなこの遭遇率
いや、遭遇律」




「!!!」





俺は思わず飛び上がる。

後ろに腕組んでえらそうに立つそいつは
いつから居たのか。

ストーk

いや、俺もひとのこといえないから
黙っておこう。


ほかの路線で注意していくしかない。

「明日から出張でしょ!
はやくかえってやすんだらどうなんですか」


「べつにまだわけーからつかれねーよ」


「四捨五入したら三十路でしょうが!」


「あー木佐にいってやろー三十路はわかくねえっていってやろー」


「小学生か!」




くすくす


司書だろう面々が笑っている

恥ずかしさのあまり
図書館を後にして俺は高野さんと帰宅するハメになった。
















一緒に帰りたくなんてなかったのに。






明日からいない人と


一緒に帰りたくなんてなかったのに。








いつのまにか伸ばしあう

つんつんとどっちかも分からない指が
相手の手を刺激して






手つなご


と誘導する




ちゃっかり恋人つなぎ。







そしてやはり








ちゃっかり幸福でしかたない、自分のまま

俺たちはマンションへと途方もない夜の道を歩いて行った。
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