セカコイ リクエスト小説

□今 再び恋に堕ちて
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有言実行。





案外 近くに教習所があり
外観からしてせまそうだなと思ったそこは
入ってみると広かった。


「うわあ」



都会とは思えない
空の広さに
俺はしばし呼吸を忘れる。

手続きとかいろいろ面倒だったけど
まずは筆記で常識テストをして…

乗れるのはいつになるだろうか



いろんな人がいた。

ほんとうに免許とれる年なのか?
って聞きたくなるくらい小さい人や

高齢者など。

でも一番多いのは
やはり俺のように大学生だったけれど。





そういえばあの人は
免許とかとったのだろうか。


そんなことを思った自分がいやで
せっかく上機嫌だった俺は
苛立ちながら教習所の待合室の自販機でコーヒーを買い
一気飲みした


眠気覚ましにちょうどいいだろう
あの人を忘れるのにも。

なんでかな

留学から帰ってきたせいか
ふと思い出すことが増えてしまった。



もう会うこともないだろうに。








扱いやすい


か。



俺は    可哀想なんだろうか。









車に乗る練習がはじまった時
俺は大学に居る間も緊張していた。

ど どうしよう
隣に乗ってる担当の人も巻き込んで事故っちゃったら

そ それで死んだケースってあるのかな?

今更ながらに心配になり
俺は免許とろうなんて言い出したやつらをにらんだけど
そいつらは俺が睨んだら
あいさつと勘違いしたらしく
明るく手を振ってきた。

前から仲良くしたかったんだよね

なんて言ってきやがったそいつら。

変なやつがいるもんだな。


と俺は頭を掻いた。

そんなやつ
まだこの世にいたんだ   と。








「えっと まずは緊張しないで
頭でじゃなくて体で覚えてってくれ
筆記とは違うから

俺は高野」

担当の人は
意外と若かった

年寄りが多いものだと思っていたけれど
ほんとうに経験あるのか?ってくらい

その人は若い。

ていうか

若いってなだけじゃなくて
なんだろう。
俺が不思議に思い見つめていると
その
高野って担当も
俺を見つめてきたので
気まずくなり俺は目線をそらした。

「じゃあまず車に乗るところからやって」

「あ ああ はい」

(ええと 順番どうだったっけ
まず後ろ確認してから座って座席調節して

シートベルト サイドブレーキ…)

「そんな緊張すんな 自然とやれ」

俺が馬鹿みたいにごちゃごちゃ考えていると
高野さんは俺の背をぽん
とたたいて運転席へと押し込んでしまった。

優しいような

強引のような


なんだっけ


この懐かしい感じ―…






俺は


たぶん


どこかで…。


「まあ道路じゃねえんだから
事故はおきねえよ
コース回れ あと道路にでても
あまりに危なかったら交替するから」

「はっ はい!」

緊張でがちがちになる俺に

高野さんは運転中ずっと目線をおくってきていた。


慣れてきたころには


運転より
その視線にどきどきしていたけど





(お 俺がミスらないか
見張ってるだけだろ!
相手は仕事だぞ仕事!!)

俺はそう思い頭をぶんぶん振った
それに注意されたけど
何も言い返せやしない。

わかった

わかったから そんなに見ないで って。















「合宿でとろうって考えなかったの?」




運転の担当の人なんて
ころころ変わる
けど
俺は妙に高野さんと一緒になって

俺と同じ無糖がすきらしく高野さんは
コーヒーを片手にそう聞いてきた。


「合宿 考えたかったんですけど
親が妙な人と一緒になるかもしれないから
やめなさいって…
はは
へんですよね
この年にもなって しかも男なのに」

俺がそう言うと
高野さんは横に座ってきた



「べつにいいんじゃねえの





大切にされたんなら

何歳になったって喜ばなきゃだめだろ


いつなくなるか
わかんねーんだから」







その言葉は重くて


俺には

重すぎて


「そうですね」


うつむいて、俺は呟いた。


ほんとうに そうですね。







でも


気のせいかな




高野さん



「好きって思ったらさ」

「え?」

「好きって思ったらその瞬間に言わないと

大切なら

大切って態度とらねーと

後悔しても もう遅いんだよ」





なんで

まるで

実体験みたいに。






その日からだろうか。
俺は免許を取り終わるのが
なんだかさびしくなった



免許はほしいけど

なんかな






高野さんと俺が会えるのって

教習所だけだし

終わったら

会えないわけだし







あれ


俺は家で寝転がり
考える




この気持ちって  なんだっけ
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