捧げ物!

□セウト。
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律が高野の部屋に入った第一言はタバコくさい
だった


もう吸うものか


そんなことを考え高野は
夕飯を二人分作っていた。



久々だ。 彼女と付き合っていた以来か

こんな風に誰かに料理を振舞うのは。



すっかり夜遅いので律は目をこすりながら
おなかすいたとさけんでいた。

欲望に忠実な子供だと それを見て面白くなる。



「できるまで寝てていいぞ」


「いやだもん そういって俺のぶんも食べるつもりなんだ
この食いしん坊虫!」

「二人分もくえねーよ」

「ぐぅ」

「はえーな おい」


律は小さな体をおりたたんで
すやすやと高野のベッドで寝息をたてはじめた。

思えば、律の持っていたバッグも
家出のつもりだっただけあってパンパンだった。






まあ お菓子とかばっかで
金がないので

いかにもガキの家出だが。


(2日生き残れるかくらいしかないし)













誘拐は犯罪だ

すぐにばれる






数日後は家に帰してやろう

だから今は

今だけは







そう思い子供がすきそうなオムレツやら
小型ハンバーグやらを並べると

律はのそのそと這い出てきて





ちゃんといただきますと両手を合わせた。





育ちのいい子供らしい。



フォークの使い方も子供みたいにざくざくとしたものではなく丁寧だった。




「あとね そのね」

沈黙に耐えかねたのか
俺が見ているのが恥ずかしかったのか
律は唐突に切り出した



「ん?」


「おれが家出したの おーじ様になりたかったってのと もひとつあるんだよ



パパがかいしゃってゆーの継げ継げうるさいんだ。

それとパパとママがきめた人と
けっこんしろだってさ」



うっかり 俺はフォークを落とした。

なんだそれ。






お坊ちゃまなのかって以上に

ひどい と思った




ただ 純粋に。


いや、一番ひどいのはこうやって誘拐してる俺だろうけど


けど  けど。







「けっこんって自分で選ぶのが楽しいんだって 友達がいってた

なんでおれりょうしんが決めるんだろ
へんなの」


胸がくるしくなる


「ああ変だな」


本当に変だな



でも大人は汚くて
そういうことができちゃうんだよ




律。





おいしいおいしいと平らげたりつと反対に、おれは味覚を失いながら夕飯を食べた





ただ綺麗な笑顔を見据えたままで、なにもできない







無力さを呪いながら。
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