捧げ物!

□忍ぶれど
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最近

高野の読んでいる本が気になる

ふとした沈黙で

そういえばあれ読みました? と都合よく切り出せるのではないか

今度ドラマ化しますよね

俳優イメージぴったりですよね
そういう会話でもいい
なにげない共通点がほしい。


そんなことを考えていて無意識だったのだろうか

律は高野の机、広げてあった本に手を伸ばしたところを


「あるぇーりっちゃんどったのー」

木佐に見られてしまった。


「うごぅ!? いえ。なんでもないですよ」


「いやあ今の切り返しで何でもないわけがないでしょー

そういえば昨日高野さんと帰ってたよね!?
しかも最近二人とも見つめ合ってる時間ながいしまさか!」

「なにがまさかですか」

くだらない

そう言い聞かせておきながら
律はばくばくと張り裂けそうな鼓動に耳を押さえた

すると

木佐は急に真顔になる

だれもいないエメ編

沈黙だけがここにある。

「って

俺も最近まではネタとして考えてたんだけどさ


りっちゃん

まじめに恋してるんじゃないの?

でなきゃ


そんな顔…」


意味深だった

しかし木佐は ごめんねおじちゃんお節介だからと どこがおじさんだみたいな顔で笑って
去って行ってしまった。
担当の先生に会いにいくのだという


律も 仕事の続きをしなければ


仕事が終わってからも少女漫画の研究
研究

休んでいる暇は、ないというのに。


また


雨が降っている


すると ふと律は

高校の頃にさんざん覚えさせられた











歌を思い出した。


なんてことはない

あの時代は世間が厳しく 許されない恋が多かった
だから現代では
純情すぎるというのに
関係ないというのに









そう たしか あれは


今の状況に不本意ながら ぴったりではないか





忍ぶれど―…。
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