セカコイ 長編

□ひきこもりっちゃん
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ピンポーン



「…反応がないな」

「ああ、はじめて尋ねた時もそうだった。
呼びかけには反応した」

「…そうか。多分チャイム類が嫌なんだろうな。目覚まし時計とか電話のベルとかそういう機械音が嫌いで反応したくない奴はよく居る。
政宗。怖がらせるような行動は慎めよ」

「…分かってる」




元から引きこもりだって知ってれば。


態度悪いことに苛立って

すこし声を大きくしてしまったことが

今更悔やまれる。


「隣の者だが   いるか?」




『……て…』


「?」


『……け…』






『た…す…』


一気に顔が真っ青になり、横澤は扉に手をかけた。
すると普通に開いた。
どうやら戸締まりというものがなってないらしい。


まさか まさか自殺か?

手首を切ってたらどうする?

それともガスとか?


俺も赤の他人だってのに
自分が辛いんだ自分が死にたいとか言ってみせてたタイプだったのに
必死に走った。








そして…









締め切ったカーテン…



脱ぎ散らかした服…


コンビニ袋…


閉まってないタンス…











40冊くらいの本に埋もれた少年。






「ぐ…くるし…」








「「部屋きったねぇなおい!!」」













その後十分かけて救出作業が行われた。





とりあえず、本当に動くのか?これ?という洗濯機に汚れた服達をいれ、、本を綺麗に四隅にまとめて、なんとか三人座れるスペースを確保した。

ごうんごうん、と洗濯機がまわる音がする




少年は毛布をかぶって、俺達を猫のようにじっとみた。
エメラルドグリーンの目が
きらきらと 揺れている。


なんだ、なんか見覚えあるぞ

そうおもって見たら、視線をそらされた。

そうやってあからさまにそらされると。
傷つくな。


「俺は、横澤。こっちが高野だ」

「……俺は・・・・・・小野寺・・・・・・・・・」


少年、改め小野寺は、そういうと毛布をより一層深く被る。


「助けてくれて・・・ありがとう・・・もう大丈夫だから帰ってもいいですよ…帰ったらいいんじゃないかな…」


小声でぼそぼそと弱気そうに聞こえるくせに若干言葉選びが偉そうである。

「なんでひきこもりになったんだ?」

「おい、高野直球すぎるだろ」

「悪いか」

俺はこいつが気になるんだ。
男で多分こいつ俺らと同じ二十歳こえてるだろうし、汚部屋でのひきこもり(ひきこもりなんだから無職なんだろう)っていったら
普通目もあてられないくらい悲惨にヒゲとかを散らかしたようにはやしたおっさんだろう。

なのになんでこいつは
さらさらとした髪
不快にならない香り
汚れをしらない心を閉ざして守ってるような瞳
でいるんだろう。



こんな儚い

こんな尊い

ものなのだろうか。ひきこもりって。


そうじゃなくて、それはこいつだから

儚く 美しいのではないか……


きっと… つらいことがあったのだろう。


寂しい思いをしてきたのだろう


家族から見捨てられた?
自殺も考えてきたのだろうか?

白い肌に、細い腰に
心配になる。

きっとこいつは

俺の何倍もつらくてー……




「えっと十年くらい前に失恋したってだけなんですけどひきこもりの原因ていったら
それで家にお金たんまりあるし稼がなくていいかな状態ですね」


「「ふっざけんなあああ!!!」」




前言撤回 こいつただのひきこもりニートだ。
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