セカコイ 長編

□幽霊な恋人1
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「なあなあ嵯峨ーホラー映画みにいかねー?
超おもしろそうなんだけど」


「は? くだらね
ストーリーないじゃんああいうの」


「ちょっと男子ぃ〜 嵯峨君そんなのみないって
バカと一緒にしないでよ〜」

「ちぇ、つまんねーの」



「なあ、嵯峨!文化祭のお化け屋敷行った!?今回そーとーやべーぞ!」

「ああ 行った行った

ありきたりじゃん? 戦慄迷宮のほうが怖いだろ」

「プロと一緒にすんなって!!」









ホラー映画?

お化け屋敷?

ましてや戦慄迷宮?




(んな怖いの自分から行くわけねえだろ!!)






そう


俺は嵯峨政宗



見た目はクール

中身は









筋金入りの怖がりだ。




しかし最近 こんな俺でも大丈夫な霊ができた。


本を閉じ、嵯峨は上を向く。

すると邪魔にならないように浮いていた少年がぼろぼろと下に菓子くずを落としている最中だった。

「おい こぼれてるぞ てか、十分に邪魔だ」


「あ!? すみません! 今片付けますんで」

「お前逆に汚すからいい…」


霊体というものはよくわからない
しかしこの少年は 

・透けようと思えば透けれる

・ショックを受けると見える人には見えるようになってしまう(透けていなくても嵯峨の両親には見えていなかったのだ)

・食事もトイレも行う必要がないが
しようとおもえばできる(らしい)

・少年からはものに触れることができるが
少年には触れられない

まあとりあえずこんなところか

つまり嵯峨が殴ろうとしても殴れないのである

殴れるもんならさっきからフルボッコにしたいくらいむかついている

少年はまた平謝りしていた(本人はいたってまじめ)



「おい、お前名前なんていうんだよ」

いまさらだが、嵯峨は聞いた。
そして
それよりもっといまさらなのが

こいつが俺のストーカーだといったこと

なぜそんなことをする必要があった?

嵯峨は元カノの彼氏の復讐線を考えたが
如何せん元カノたちに
こんな女っぽくガキみたいな彼氏が居たような記憶はなかった。

じゃあ、男が男をストーカーする




ほかに理由って??

少年は宙で何がおもしろいのかくるくると回転しながら

「なんだと思います?ふふふ」

と聞いてきた


「追い出すぞ」

「っ小野寺律です」


嵯峨ににらまれ、そんな怒ることないのにと少年―…

律はしょぼんとしてしまった

まあうざいから放っておくとして


気になったことは聞けばいい

嵯峨のなけなしの生活費で買ったおやつを食い勝手に寝泊りしてんだから
そのくらいはしてもらおう


「で? 何で俺をストーカーしてた」


そう

小野寺律がもし、嵯峨を恨んでいるとしたら

上から菓子くずを落とせるのと同様


鈍器を落とすことだって可能なのだ


そして嵯峨が死んでも
律はつかまることはない


この状況は幽霊うんぬんをのぞいて
怖すぎる。


すると 律はまじめな話をするときのように
嵯峨のしたの目線まで降りてきて

顔を真っ赤にして






つぶやいた





「す、好きなんです
嵯峨先輩が」


身体全体から もじもじという音がでてきそうなくらい



しおらしい姿





ふうん



へえ



「は?」




お前、男だろう。




「すみません意味分かりませんよね
いいですよ
俺のことは気にしないで


なんか

元の身体の戻り方もわからないし

ただ見てるだけだったのに
こうやって会話できて

俺満足してきてるんで
そのうち成仏すると思います

だから 気にしないでください

ただ好きですから

彼女とかできてもそれは本当に邪魔しないんで」




誠実な

ストーカー

いや、ストーカーな時点で誠実ではないのだが



なぜだろう。


嵯峨は胸が痛むのを感じた



嵯峨のせいではない
ストーカーしていて轢かれたなんて
むしろざまぁって感じなんだろうけど


でも


心がざわつく

まるで







俺が殺してしまったような




「……いまのところ 彼女とか考えてねーよ」


それは本音だった。
いちいちデートとか避妊とか
必要だけどめんどいし

すると

そんな内心も知らず

律は


「よかったです」


と満面の笑みを嵯峨に向けた



「!?」







ドキン





ドキン



なんだ これ





もしかして 俺は



「あ、すみません菓子くずベッドのシーツのほうにも落としちゃいました」


「てめえええええ!!!」







一人で叫ぶ 休日の昼下がり

偶然帰ってきた嵯峨の母は
育児放棄のせいで息子の頭がおかしくなったのかと


落ち込んだが
張本人の嵯峨と律は知る術もなかった。
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