セカコイ 長編

□小野寺律=りっちゃん!2
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ソラ太は、妙ににやにやしながら戻ってきた。
アイスティーを左手に
そして、右手にコーヒーを。



「なんで俺の名前よんだの?」


「っ…」

ちぢこまる

たしかに、あそこで立ってまで名前を呼ぶ必要はなかった。

会話をさえぎるような真似をして

てか、なんでそんな行動に自分がでたかもわからないのに
聞かれても。


「の、喉がかわいてて」

そんな言い訳をして、いままさに喉が渇いた。

ガキか!

もしくは バカか! 俺は!


「おまえ、かわいいんだな」


がららと無造作に席が引かれる。
え。いま可愛いって言われた!!?


だとしたら

どんだけ木佐のメイクがうまいんだか


「か、かわいくないですし
お世辞やめてください


すっぴんとか最悪ですよ」




なんせすっぴん男だしね


「あのなあ 俺はそういうの疎いけど
さすがに化粧だけでごまかしてるやつと
素がいいやつの見分けぐらいつくよ
てかお前ナチュラルメイクだし
そうかわらないだろ すっぴん

それに俺がかわいいっていったのは
お前の性格。

まあ見た目も驚いたけどな

モデルみてぇだし
整形とかしてんのか?おれ、べつに
うわ整形かよって思うタイプじゃねえからいってみ」


なんで整形してるのが確定なのかは知らないが
律は濡れ衣だとクビをふる






「うち、親がきびしいんで
ピアスすらあけさせてもらえません
ましてや整形なんてしたら
親からもらった顔をって怒鳴られそうですし…

数年前までは、こういう喫茶店だって
着色料が多いから食べ物も飲み物もだめっていわれてて」


言ってみて律はげんなりした

女ならともかく
って いまは女なのか


「整形してねえのかよ 
それでこんなちっせー顔して肌に張りがあって鼻がたかくて
…レベル高いな 俺の想像した出会い系とちがうんだが」

まじまじとそういうソラ太に
それはこっちのせりふだ
と思うのだが律はあえてだまっといた

(外見の褒めあいとか
苦しすぎる)

てか、ソラ太の顔を直視できないのだ





整形なわけがない


こんな美しい顔は



人の手でつくれない。


それから、二人は好きな本の話をした。
チャットでするのと同じ
場違いなくらい健全で
場違いなくらい熱心な語りに


空は赤みがかっていった。


それをみて、ソラ太が あ と声をもらす


「? すみません何か用事でも?」

ソラ太が想定外だったような顔をしたから
律がそう問うと
いや…とソラ太は軽くクビをふった。

ん?

頬が赤みがかってて


照れてる?




「色々…その…
俺なりに今日のプラン考えてたんだけど
映画とか…
だからこんな喫茶店に長居するつもりはなくって
会話盛り上がってて忘れてた…

こんなのはじめてだなって

ああ

なんか支離滅裂ですまん」


いや 言いたいことは分かる
律だってそうだった。


木佐から言われてたじゃないか


今日中に





お金についての話をする

性的に興味があるかを聞く

誘う


それらをひとつも達成せずに
こんな、友達みたいに話して
長年の仲みたいに
寄り添って。


「店、でようか」


「はい」


どきん どきん


すこし前方を歩く
彼の姿に見惚れる


同じ男として だろうか

私服のチョイスもいいし

顔がよくて出会い系なんて性格がそうとう悪いか かなりの口下手かなのに
そうでもないし


「これ、俺のお勧めの店なんだけど
本屋とか文房具やとかすき?」

「はい! すきです!
ブックオフで5時間つぶしたこともあるくらいです!
あと文房具みてると使わないのにテンションあがりますよね!」


「めずらしい趣味してんなあ…おまえ…」


あきれられただろうか

けれどソラ太は

驚くくらい優しい目をしていて。



「…」

どきん


どきん



そのとき

脳裏に


あずさの姿がよぎった


「ヴア」


「!? ど どうした? やっぱこの店いやだったか?」


慌てて聞いてくるソラ太
いや
そうじゃなくて

(俺 最低なこと思ったんです)




あずさのためにこの人をだます
そういう罪悪感だよな?
この胸のいたみは
なのに

いま



(俺は)





あずさといるときは
わがまま可愛いなとか守ってあげなきゃ
て思う
それが恋だ

そうに違いない

のに

あずさに対して思ったことがないことを
俺はソラ太さんに思ってしまった。



許されない

最低



(触ってほしい なんて)


俺   どうしたんだろ


「…すみません 何か変なこと考えちゃって」

律がそういうとソラ太は驚いて
そっか
といい、右頬をかいた






「俺も 変なこと考えてるから


おかしくねーよ

気にするな」
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