セカコイ 長編

□小野寺律=りっちゃん!2
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「〜っっ」


ぎっしぎっしと、間接が音をならすように
律は歩いていた。

前を歩く ソラ太が直視できなくて。



「そんなに緊張することないと思うけど?」

振り向いた ソラ太 は
そう笑った。


「…ご、ごめんなさい…」


「あやまんなよ。どっか店はいるか


安心しろ
あやしい店とかじゃなくて、ふつーの喫茶店」

怪しい店って??

そういわれ律は遅れてはっとする
そうか 今、女の姿なんだっけ
ということは
怪しい店ってのは 風俗関連かラブホとかそういう…。


「っ…///」


「…? はは、顔真っ赤。ウブなんだな意外に」


清潔そうな
硬くて、冷たい手が律の頭をくしゃりと撫でる。
心地よくてうっかり目をとじると
ますます笑われて。

周囲からは いいなあ。あのカップル
なんて、声が飛ぶ……。


「も、もうあそこの喫茶店で休みましょう!」

俯いたまま思い切り指を刺した先は
チェーン店の 喫茶k&k

これなら値段もそこそこだし
割り勘でも払えるってもんだろう(もともとかねがなくてこの作戦に出たのだから
今の所持金は果てしなくとぼしい)

しかし一向に入ろうとしないで
こちらを見ているソラ太に律は驚いた

ああ そうか 大声をだしたから
声の低さで男とばれたかも!?

「ええとその」

「…なんかお前の声いいな。



変に甲高いのって俺苦手でさ

お前ぐらいの声、落ち着くよ」

「…」




優しい

穏やかな目

何て…なんて…




罪悪感をそそるんだろうか。

「(やっぱやめよ
この人から金巻き上げるのとかいや過ぎる)」


「…りっちゃん?」




本名が分からないソラ太はクビをかしげて聞いてくる

だから律は いえ…と紛らわし
ソラ太と一緒に喫茶店の戸をあけた




「いらっしゃいま…きゃーっ」

「格好いい!」

「おいお前らまじめに接客…格好いいな」


どうしよう


すごく居心地が悪い。


そうだ この注目度は俳優と付き合ってるようなもの。
相手は出会い系で知り合っただけだというのに
棚から牡丹餅っていうんだっけ
こういう現象…。

「…先に席をとるか」


「っはい、そうですね!」


叫んでから声をおさえる
そんな律を横目にソラ太はせまい席のところにわざわざ行くと
となりに座るよう指示してきた。
ほかにも窓際とか
快適にすごせそうなところは空いている。

だからなぜわざわざそこなのだろうと怪訝な顔をしていると

ソラ太は照れたようにわらって
背後通られるのがいやなんだと言った。

ソラ太がえらんだそこは
ちょうどうしろが壁になっていて人が通れないようになっている。


(なぞがおおいな ソラ太さん)

「じゃ、お前なにがいい?
この程度おごるとはいえねーけど
おごるから」


「…うぇええ!?」

律は思わず裏返った声で叫ぶ

男におごるだと!? 何正気にならないことを…。

て 今女なんだっけ




ヤるための安心させる代金だと思えば
まあ、安いのかな?


「あ、アイスティーで」


本当は男なんですよ
だから、たった抹茶フラペチーノとかの350円を出したことも悔やむ日がくるかもしれないので
律は一番安いアイスティーを要求した。

ほんとうにそれでいいのか?
とクビをかしげるソラ太は

じゃ、まあまってろ といい店員のほうへ行く。




(男とデートか



ありえない経験してんなあ俺)







ふつうだったらありえない
というか、律は潔癖で留学したさき
ホモとかに絡まれたり
抱きつかれたりするのも正直気持ち悪くて
怒ったほどだった。






なのに なんで

もやもや?

イライラ?

アルバイトのやつに絡まれてるのか
ソラ太が笑っていた

ソラ太の華やかな笑顔にたいし
女の方は下心丸見えな笑顔。







「〜っ ソラ太さん!」






やめて


やめてよ





名前なんていうんですかあとか
どこからきたんですかあとか







俺より先に









ソラ太さんを知らないでよ。
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