セカコイ 長編

□小さな恋物語B
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木佐と吉野は同じ部屋に居た



「…」

「…」

そして互いに にらみ合っている。


「りっちゃんは渡さないからな!」

「お 小野寺さんは誰かのものってわけじゃないじゃん!」

「うっさぁーい俺がどんだけ前から
目つけてたと思ってんだ!」

「そんっなのしらねー!
小野寺さん俺のこと可愛いって言ってたし

小野寺さんじゃなきゃ俺はいやなんだよー!」

さて

なんでこんなことになったのか

時はすこしさかのぼる。




羽鳥は今
家族旅行に行っていて
暇な吉野は一人園内を掃除していた(いつもはこっそりさぼっている)

すると律が当然のように手伝ってくれ
横澤の一件があったため
木佐にあやまるなと言われていたものの
我慢しきれなかった吉野は頭を深く下げてあやまったのだった。

「ご ごめんなさいっ
俺が横澤さん後ろに居るの気づかずに
横澤さんのことを言い出したせいで
結果的に小野寺さんがっ」

だって本当にあやまりたかった。
いつも親切にしてくれる律が
横澤からいじめられるのを見るのは耐えられなかったからだ。

けれど律は
ふっと笑い
エメラルドグリーンの目を細め
その長いまつげを揺らしながら


「吉野先生のせいじゃないよ
ありがとうね
わざわざ気にしててくれて
これからも横澤さんに何かされたら
俺に相談してね」

とまあ

バックにバラを散らしながら
言ったのだった。




そして


吉野は 




( ああ 俺もこんな男の人になりたいなあ
格好よくてきれいで

精神だけは小野寺さん

ザ・漢

って感じだよなあ


あれ 俺ザ・漢好きだよな

ってことは 小野寺さんのことも





好きー…!?)






見事に 憧れ=好きを
勘違いし
しかもその場で

「小野寺さん、良かったら今度お茶しませんか!」

デートの約束を切り出した

いざとなると直球な男なのである
そしてあっさり

「え? あ ああ いいですよ」

と返す律に

「なっ なにいいぃぃぃ!!?」

と叫ぶ偶然二人を発見して走ってきた
木佐。



そして冒頭に戻る

ちなみに今


律は嵯峨にくどかれながらも必死に園児を寝付かせてる最中だ。
ちなみに嵯峨が言うに
おまえが横で寝るなら寝る
とか言っているらしい
律は そんなことできるかと顔を真っ赤にしていたが

木佐と吉野は知るよしもない。


「と とにかくデートの約束は取り消さないし!」

そう主張する吉野に
腕を組んでにらみっぱなしの木佐


すると


「でーとってなんですか木佐さん!!」

幼稚園の皇子様と呼ばれている

雪名が園児立ち入り禁止なのにも関わらず入ってきた。
おそらく廊下で でーと
という単語を聞くだけ聞き乗り込んだのだろう。

「ゆ 雪名…」

なんでか。

律をすきなはずの木佐は
眉をさげ、困っている
それは教え子にこういうところを見られたくなかったという
先生らしき姿勢とは違ってみえた

吉野は自分のことには鈍感なくせに
ふとそう思いながら

今がチャンスだと切り替え
逃げ出す。




「ああーっちょっとまて
りっちゃんとの話まだすんでなーい!」


そんな声を遠くに聞きながら
走る
走る


だって こんなにどきどきしてるんだ






(小野寺さん
俺まちがってないよね
この気持ち恋だよね)

走りながら ふと思った

メールとインターネットだけは出来るから

メルアドとか
交換しておけばよかったなって。


それでデートの約束とかいろいろして
いろいろなところに行って…
トリもつれて三人でわいわいするのもいいなあ





無意識に羽鳥の名前を思いながら
吉野は意気揚々にスキップ近い走りになる。

「まぁーてぇー」

そんな吉野の


背後にはただひたすら


木佐の怒声だけが響いていた―…。
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