セカコイ 長編

□愛の追憶
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懐かしい記憶。

騒がしい校舎
開け放たれたドア


「ちょ、ちょっとみんな話しきいてください…」

「あー? うっせーよ
父親のシャツ間違って着てきたバカの奴の話なんか聞いてられっか」

「それ言わないでよー!
本当に今日中にこの企画決めなきゃやばいんだってー!」

りっちゃんはいじられキャラだった。
いや、愛されキャラって感じかな。

どじで。
可愛くて。

女の子より細くて
お人形さんみたい。

それに…




「きゃーっ」

体育の時間。

女子だろうと構わず全力でボールをぶつけてくる男子達で賑わっている。

男女混合のドッジボールでのこと。

また男子の方にボールがいき
キャッチしたのは律っちゃんだった。

目の前には逃げ遅れた
暗い目の女の子。

私は体育が得意だったから
あー。あれはもうだめだな
と思った。
外野にまわってもああいう子は頑張ってくれない。ただ休んでるだけ。

だけどそのボールは遠くに居た男子に飛んでいった。

あてられると思っていなかった
ソイツは

「いてえ!」

と叫ぶ。
膝に見事あたったボールはトントンと地面を跳ねた。

「やったー」

りっちゃんは笑ってる。

私は一瞬 そういうフェイントを狙ったのかと思ったが

違った。

りっちゃんは女子を狙わないようにしてたのだ。
その後さりげなく聞いたら

今日のあのボール結構固めだったじゃない?
と言って笑っていた。


ああ

りっちゃんはかざってない。


この子の前だから優しくしよう
なんて風じゃなくて

元々が優しい
ねっこが優しいんだ。

そんな人
日本でIQ130より珍しいんじゃなかろうか。
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