セカコイ 長編

□愛の追憶
2ページ/11ページ


「律が…律が帰ってこないの…」

その電話がきたとき。
私は息が止まりそうになった。

それから、何度目か分からない
焦燥感におそわれる。

りっちゃんはそうだ。
時々パッといなくなる。

多分中学のとき
好きだった人がいなくなっちゃってから。
留学先でも構わず
りっちゃんはフラフラとしていた。

この前付き合ってた彼女とも別れちゃったみたい。

彼女のほうが浮気したとか。

でもそれを無表情で語ったりっちゃんが
果たして彼女を愛していたのかは謎だった。

傷ついてない
ただ
やっぱりね
っていう口調だった。

なんで?

なんでそうやって りっちゃんのことを理解しない愛しもしない人と
りっちゃんは付き合うんだろう。

私だったら
りっちゃんを愛してあげられるのに。


それとも
期待していいの?

誰ともうまくいかないのは
私にだけは一切手を出そうとしないのは

私が好きだから?

りっちゃんは分からない。

まだ あの人 をひきずってるのか
彼女にフられて実はショックを受けてるのか
私が好きなのか


誰も

好きじゃないのか。


私は厚手のコートを羽織って
走り出した。

すごい雪だ。

こんなんじゃ風邪ひいちゃう。

電灯が不吉な知らせのように瞬いて
私が通った足跡を照らしていた。

りっちゃん…。


私は走ってる。



私も、つい最近  別れた。

元彼はよくこう言ってた。

「杏ちゃん あの律って奴がすきなんでしょ?
なんで? 顔はいいとおもうけど
彼女いるし性格もわるいのに
なんですきなの?」

私はそう聞かれ
焦りもせず 多分こう答えた。

「りっちゃんの昔の姿知らないから
そういえるんだよ。
りっちゃんは明るくて優しかったんだよ」

ああ。
いまでもあの元彼のあきれた顔が
忘れられない。


「ああ。昔に浸ってるだけか。
人はかわるんだよ。
それは恋じゃなくて
ただ あの頃はよかったなーっていう感情だよ」


そうなのだろうか。

私は

今の

変ってしまったりっちゃんのことを

どう思ってるんだろう?
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ