セカコイ リクエスト小説

□君をもう一度だけ
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胸が引き裂かれる感覚で目が覚めた。

静寂が影を伸ばす部屋の中で
秒針が行ったり来たりしている。

頭がにぶく痛い なぜだろうと思ったが
それはすぐに分かった。枕元がぬれている。

自分はまた泣いていたのだ。

  
 ああ、好きだよ




そう返してくれると信じていた
いつかの自分。



なんて 愚かで単純で滑稽な生き物だったのだろうか。



カレンダーを見ると
いつ親がめくったのだろう

月がかわっていた。
書いてある丸印は留学する日。

(いい加減立ち直りなさいよ)


そういわれている気がする

ていうか、気 だけでなく 言われているのだろうけど。



のそりと起き上がって
俺はその無機質なカレンダーに触った。
これをめくらなければ時が止まったのではないか

いや、まさか。


部屋の前 おいてあるだろう夕食の香りがかすかに鼻腔をくすぐる
同時にお腹が鳴るのは 動物の習性で
所詮人間も動物でしかないのだと再確認された。



そうだ そもそも動物は
子孫を残すためにそれに見合った相手に性的に感情を持つだけなのであり
人間が勝手に それを 好きだの恋だのと詠ったのだ。


では 自分の恋とは何だったのだろうか

いくら寝ても何もうまれない
あの行為は 人として反していたのではないだろうか。



だとしたら この痛みは
ソレに対する罰なのか。

また 朝が来た。



しめ切ったカーテンすらつらぬく太陽の光が
それを教えてくれた。


いつもなら俺はここで横になる
そして再び 絶望に打ちのめされ
泣く 泣く。
けれど俺は立ち上がり鏡の前に立って











彼がかわいいと触れた額を前髪で隠し
彼がかわいいと言った笑顔を消して


部屋の戸をあけた。









喜ぶ使用人の声
抱き締める母の手
仕事で忙しいだろうにすっ飛んで帰ってきた父を尻目に俺は考える。









本当の意味で一人になるには
自立しなければならない。
だから出てきたのだ









そんな思惑にも気づかず いつまでも小学生と思っているお前らは






バカだ。





なるほど


こんなやつらに育てられているから
俺自身もバカだったんだ。




俺は人を見くびり
同じ人 が書いたはずの本に逃げた
恋しなければと焦る人ごみを
自力で生きてく力のないやつめと笑った。


奥底で誰かが 本当はただ必要とされたい
自分も愛されたいと叫んでいるのは


なんてことはない



プライドで押し込めておいた

そしてそれは二度と開かれるはずはなかったのだ。






















ジリリリリリリッ


ちょ、 ねむい


ジリリリリリ


寝かせてって



ジリリ…





「おい! 小野寺お前今日遅刻したらやばいだろうが!」


「!!」


あわてて起き上がる。すると10回目のアラームが鳴った後だった。
しまった、てかどんだけ眠かったらここまでアラームをスルーできるんだ。
ちなみに11回目のアラームは高野さんである。
あわてて服を着替え企画書をかばんに突っ込んだ俺は
今朝見た夢のことなど覚えていなかった。
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