セカコイ リクエスト小説

□友情と同情の行く先
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(注意:私は桐横の場合(小説)をなんとまだ読んでいないという、恐るべき りっちゃん並みの横澤っち初心者です

ですので完全に過去捏造

でやらせていただきます)



*********



大学で必死になって前のほうの席にならぶやつは一年ばかりで。
正直いって俺はバカにしている。
教授ってのは案外身勝手だ
そんなに生徒のことなどみちゃいない
最前列に並んで見られるのは欠点だけ。
ま、だからといって後ろに並びすぎるのも遅刻者だから

ほどほどに見えない位置に居るのがよくて

前でもない
後ろでもない


そんなことを考えて座った席の横

まだ始まったばかりだというのに寝息をたてている男が居た。

妙に肌が白いな。
引きこもりか?


一年には見えない。おそらく、俺と同い年くらいだろうが…。


そのときはそれだけだった。


結局男は教授の言葉に皆が笑っていても
機械的なチャイムを聞くまで
おきることはなかった。


俺が そいつに目をつけたのは
名前まで知る羽目になったのは


結構後だ。



それもそう、あの日は
うなるような暑さだった。

とくに、勉学中心でクーラーとか
暖房とかへんに使うとみな居眠りするからとかいう理由でうちの教室は地獄と化していて。


おいおいこれじゃ寝るより先に完全に意識もってかれるっての。

俺は途中から雑な筆記の並ぶノートで仰いでいた。
ま、どうせ今日は授業がない
なんせレポートで最優秀をとった人の発表とかなのだから。

優秀賞は留学一ヶ月の権利

そして最優秀は一年だったか。

関係ないし興味ないから
俺は癖になったように 横を見た。

なんとなく横が寝てたら
寝やすいからだ。

連鎖的に。


だけどめずらしく男は起きていた。






眉間にしわを寄せて。

黒板にでかでかと書かれた


留学



の文字。





なんだ? なにが気にくわなかったんだ?



そして驚いたのは
その後だった。


教授がこういったのだ





「今回は最優秀賞がでました。
学生番号211893

えー 高野 政宗さんの 明治文学の…」





は?


出たのかよ! 最優秀賞!


騒ぐクラス






そして





横の男は嫌々、という風に立ち上がった。




「ああ、あなたですよね高野さん
前に出てきてもらえます?」


「はあ!?」


はあ!? と返したのは もちろん
その 高野ではない
俺だった。




だって予想外すぎるだろ!
こいつずっと寝てたんだぞ!
やる気ないわ人生あきらめてるわっぽくて




頭…よかったのか?









「単位もらえたらいいんで
留学とかどうでもいいんで」


高野が語ったのはそれだけだった。

そのあと、優秀賞のやつが泣いて喜んだ感想がしらけてしまうぐらい
高野はあっさりと去っていった。





不思議だ。





あいつには





女も




容姿も






ましてや能力もある。







なのに何が不満なんだ?
なんで投げやりなんだ?






なにか病気を抱えていたりするのだろうか。
俺は 檸檬を書いた梶井基次郎を思い浮かべる

あの男は何をしていても
結核という闇に追われ無気力に近かった。
じゃあ高野も

結核は現代の医療でなおるので

なおらない系のやつを抱えているんだろうか





気になってしまっては仕方なかった。

俺は次、授業が一緒になったとき
教室から空気のように出て行くやつの肩をたたき
それから話題を考えるなんていう無様な形で

無理矢理話しかけた。




そうしてみて気付いた
なぜ今まで自然とこうしなかったんだろうと

高野は案外すんなり会話を返してくれた。


「次の授業代返しといて」





っていう会話を。


なんだそれ!

去って行く高野の髪はぼさぼさで
あいつは原石の塊だなと想わせた。


ああ、みがきたい

絶対いろんな意味で良い男になる

そんなことあいつ自身も気付いてるだろうに







ミステリーだった

それがなお


興味をそそられた。


それと同時に寂しくなった。







お前、しらないだろう。

俺が授業一緒になるたび
ずっとお前の方みてたの




お前しらないだろ








俺が






俺が

こんなに    お前に。
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