セカコイ リクエスト小説

□今 再び恋に堕ちて
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「やばっ 間に合うかな」


人工的な木々が並ぶ中
知的な姿勢で行きかう人々の間をぬい


小野寺律は
レポートを鞄に2号館へ向かっていた。

1号館から離れすぎているそこは
移動だけで一苦労だ。

とはいっても
此処に2時間も3時間もかけて通っている人間もいるらしく
それを思えば俺は楽な方だろう。

なんせ俺は此処まで外車で送ってもらっているからだ。

目立つっちゃありゃしない。

父が言うに歩きすぎて足がおかしくなったら
どうするんだと。
そんなんで日本男児がおかしくなってたまるかと思うが

家の者は誰も聞いちゃくれない。




「はあ」


なんとかレポート提出は間に合った。
安心した俺は これで帰れると
伸びをし
一呼吸する。


と同時
周りをたいして仲良くもない同じ講座をとってるやつらが囲っているのに気づいた

驚くが

ひるまない

「何」

俺は そいつら
を見てそっけなくそう言う
それに気分を害すでもなく
そいつらは


「いやあ 此処わからなくてさー」

とへらへら笑った

偏差値が高い学校でも
こういうのがいるんだから
世の中わかったもんじゃない


「あっそ 担当に聞けよ
俺帰るから」

「あーあー冷たいなー
それに律 お前まだ帰れないだろ
お迎えの車来てないじゃん」

ああ

むかつく

でも たしかにそうだった。



使用人のあいつら送り迎えを絶対に車でしたがるもんだから
俺はあいつらに合わせて帰れないのだ
ありえない
あいつらが俺に合わせるべきなのに。

「で 話なんだけどさ
此処に居るメンツで
教習所行って誰が一番最初に免許とれるか

しない?」

「はあ? なんで俺がそんなこと」

俺は思い切りそう言って
それから思う

こんな態度
心も体も
高校のころじゃありえないな
って

人間って数年で変わるものなんだな
まさか此処までひねくれるなんて
思ってもみなかった。


そんな風に過去に浸ってる俺をよそに
そいつらはわいわい盛り上がる

「いいねそれ」

「そうしようそうしよう」


「ちょっ勝手に決めんな!
俺はお前らと馴れ合うつもりも
免許とるつもりもな…」


俺がそう叫ぶと


そいつらは俺に向かって馬鹿にしたような目線をおくった


「へえ 勝負に負けるのが怖いから逃げるのか」

「じゃ まあ仕方ないな
ごめんなー話かけて」



…………ぶちっ

「上等だ!
俺が一番に免許とってやるよ!」






しばしの沈黙


あれ

これが奴らの望みなんだろうに
俺は変なことを言っただろうか


「なんつーか 噂に聞いてたとおりだけどさ…」

「律…おまえ扱いやすすぎるよ…」

「犯罪に巻き込まれないか
お兄ちゃんたち心配だよ…」


なにがお兄ちゃんだ

とかつっこみたいことは山ほどあったが

俺の負けず嫌いには火がついていた。


ようし!
明日から教習所通うぞ!!









この負けず嫌いだけは

過去から変わってない唯一のものだ。

なんて




こんな一面











ほんのわずか付き合っただけのあの人は


まだ覚えているだろうか。
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