セカコイ 短編

□猫に好かれない訳
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マンションの前

会議が長引いてしまった
ため俺は一人で帰っていた。

小野寺の奴と帰ろうとたくらみ
たくさん仕事を与えたのだが
最近奴も仕事のこなし方がスムーズになり
先に帰られてしまった。

編集長としては嬉しい成長であり
恋人としてはさびしい成長だ。

今日も嫌がらせのように押しかけてやろうかと考えていると
緑のコートを着た細身の少年がしゃがみこんでいるのが見えた。

ていうか
小野寺だ。

あんな草の近くにしゃがみこんでどうしたんだ?

気分でも悪いんだったら
大変だと
俺は近寄ろうとした

が。

「よしよし」

「にゃーにゃー」

近くに来て分かった。
律の白魚のような指にまとわりついていたのは黒猫だった。

猫と仲良くなろうとしてるのか。

「かわいいなー」

そういって一人猫をあやす律。

お前のほうが可愛い

と言ってやったら
あの白い頬は赤く染まるだろうか。
そんなことを思っていると
律は突然


「そうだなー
よし

お前の名前はナルガクルガだ
なんか毛のツヤが似てる」

と言った
なぜか名をつけられた猫はむっとしている。

俺すらも唖然とする中
そんなことを気にしてないのか

律は黒猫の横にいたほかの猫たちにも勝手に名前をつけていった。

「お前はティガレックスでー
動き似てるしね。
同じ理由でお前はボルボロス
こっちはギギネブラって感じかなー。
よしよし
強そう強そう
尻尾切られないように注意してね


って


あれ!?
高野さんいつのまに俺の背後を取ったんですか!?」


「いや…

なんつーか。

俺お前が猫に好かれない訳わかったかもしれない」

「え? 教えてくださいよ!
寝癖かな
やっぱ」

「惜しいな

ネーミングセンスだ」











なんだこれ。

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