セカコイ 長編

□小野寺律=りっちゃん!3
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三章 彼女の秘密





恋を自覚してから


あずさに

ソラ太に


会っていない。


ただそのどちらともネット上で会話だけはしている。




fromあずさ


今週うちのクラス、レポートだから
デートは勘弁してやるよ
その代わり次までに貯金よろしく





from ソラ太





この前は ごめん


色々急に悪かった。


今までどおりこうやって会話してくれたら
それだけでいいから

よろしく。




信じられない…。


(同時並行で付き合ってるなんて絶対いえないいいい!!)


目をとじると
どっちからも捨てられる未来が思い浮かんだ。

それに青ざめ
律は久々にあの男に連絡する。



ピー

ピー

ピー





『もしもし?』

『あ、ああ…木佐先輩 
お金巻き上げる件 一回会ってみてさあ
やっぱあきらめることにしたんだけど』


『……なんか言われた?』

木佐は、そっか とも だめだよ
とも言わず
そう聞いてきた。
なにかいわれた か。
何か感づかれ、決行が難しくなったかと思われているのだろうか
そうじゃない
罪悪感が
恋心が




芽生えてしまったから…。

律は受話器を硬く握り
汗ばんだ前髪を揺らして べつに なにも
と答えた


『ただ、名前を聞かれた…だけで』



『っもしかして、本名答えちゃった!?』


『いえ

織田律  っていいました』


『…そっか
まあ本名じゃないならいい。
男とこの段階でばれたら一番やばいからね。

でも あきらめないで


ほかのターゲットはだめだ
ソラ太は金を持っている
そして金の貸し借りには、お金を持ちすぎて疎い

りっちゃん
大丈夫だから、俺に言われたとおり続けて。



警察にはばらさせない』


木佐の声は
普段のおどけた感じと違い 淡々と言いつけるボスのような威圧感があった。
律はそうじゃないと心から叫びたくなる
警察が怖いとか
そういうんじゃないんだ。

けれど木佐は
まるでその考えを読み取ったかのように言ってきた。








『りっちゃんは、 あずさちゃんのために

最後までやり遂げる気はないの?


確かに犯罪だけど
これっきり 一度成功させれば大金が入る


いい? 次俺が連絡を入れるとき
俺の指示に従って
ソラ太さんにお金を請求して
でないと会えない というんだ。
デートしてるとき、結局小型マイク使わなかったけど
なにかあったら駆けつけようと思って
ほかの喫茶店で見させてもらった。


ソラ太は、りっちゃんに気がある。大丈夫。
間違いない
彼はお金をだしてでも
不審に思ってでも
君を求めるはずだ』


耳が痛い
もう、声を聞きたくない。







「な、なにが あずさのためだ
確かに、お金があれば彼女を楽しませれるけど
だからって、これは浮気も同然じゃないか
ばれなきゃなにやってもいいのかよ!?」


そうだ

律は間違いなく思う

これは正論のはずだ と


しかし 木佐翔太は容赦なかった。

ただもう一度









「あずさちゃんのためになるんだよ」


というと










通話を途絶えさせてしまった。












彼女はきれいだ

綺麗で気高くで


でも どんな顔してたっけ


ソラ太の顔が浮かぶ。


優しい目


白い肌


冷たい手




―あずさのため―

律は喘ぎ 蹲る。

なぜこんな思いをしなければならない。


あずさに
木佐に



会わなければ













ソラ太に会わずにすんだのに…!



一体なんで、こんな目に。
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