セカコイ 長編

□小さな恋物語A
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「幼稚園での仕事はどうだ?
今日は久々に実家に帰ってきなさい」

休日

律は朝っぱらから父のメールを見て
げんなりしていた。

帰ってこないか
じゃなくて
帰ってきなさい

命令形だ
拒否権なんかない

だからいやなんだ。
律は 父からのメールをすぐに消去し
それから実家に帰る準備をしだした
自分に呆れた。

「かっこわる…」

そうつぶやいて加えた
ゼリー食品は
空腹を満たすだけのもので
食に喜びを感じない律は
胃の痛みを感じながら
ため息をついた。

「嵯峨君…」


たすけてよ


って
あれ

ん?

いやいや。

なんで此処で嵯峨?

律は頭を振りまくり
鏡の前
髪を掻きあげた。


「俺はショタコンじゃない俺はショタコンじゃない俺はショタコンじゃない」

何度目かわからないつぶやき。
最近気づいたら
嵯峨
という名を口にしてしまう
本当に無意識だ。
しかもつぶやいた途端に
胸がバクバクする。

やばい これは本当にやばいかもしれない。

「実家かあ…。

父さんは無視すればいいとして

アイツ帰ってないと

いいな…」


律は髪型を整えると
玄関先
なむなむとお祈りした。

あの家(館に近い)
で律に無礼を働くものはいない。
けれど
一人だけ…

あの家には 魔王(人だけど) がいる。











「お帰りなさいませ 律様!」

マンガの世界みたいなメイド服を着た使用人(変態父の趣味かも)
大理石の廊下
天使の石造の周りのライトアップされた噴水。

シャンデリア

赤いカーペット


なつかしの我が家だ。
律は見回しため息をついた

「久しぶりだな

もっと頻繁に帰ってきたらどうなんだ?
仕事変えるか?」

「いえ。いまのままで結構ですよ
なんとか都合つけて
次ははやく帰りますんで」

受け答えはするが律は絶対父の顔をみていない。

あと
挨拶も絶対 お久しぶりです
なのだ。

ただいま

とは絶対に言わない。
そんな些細な抵抗に気づいているのかいないのか
父はすぐに仕事へ向かい
母は律に増築したところへの案内をはじめていた。

使用人にまかせりゃいいのに
動きたがるのは
昔からの母のくせだ。

(そういや 父さんと母さんって
親の命令で結婚したのかな?
そのわりには仲いいよな
自然だし 浮気もたぶんしてない
小野寺家は理想の家庭としてテレビにでたこともあるくらいだし


じゃあ


俺と杏ちゃんも相思相愛になるのかな。
理想の家庭になるのかな?

まるで妹と結婚しろ

って言われてる感じなのに?
ありえるのか?

別に杏ちゃん

嫌いじゃないけど
罪悪感でいっぱいで
俺以外にいいやついるって思えちゃって
それに何より


恋愛対象として見れないのに)

あまりにも失礼だ。
律は増築した部分など興味なく
思考をめぐらせる。


(別に木佐と一緒にしないでほしい
女の人に興味はあるんだよ。

エロ本も部屋に隠してあるし
リアルな女性がだめ という意味の分からない理屈でもない
現に結婚してもいい
と思えるような彼女が居たときだってあったんだ


そうだよ
俺と杏ちゃんは
昔から一緒に居すぎたんだよ

幼馴染が恋人って確かにストーリー的に
ほほえましいけど
実際 そうなるケースは少ないんじゃないか?
一緒に居すぎて
そういう性的な衝動が起きないっていうの
何でわからないかなあ)

杏は美人だ
律は自分ごときが選ぶ立場なのが申し訳ない
と思っている

(大切にしてあげたいんだ。

そんな自分の欲望で汚してやりたいだなんて
思えない。
独占したいとも思わない。

ただ良い彼氏を選んで

幸せになってほしい
そのためならどんな協力もする

笑っててほしいから
なかないでほしいから

とは
思う)


もしその感情が恋なら
律は杏に恋をしまくっている。
でもそれは絶対
違うだろう?




「でねー こっちがねえ」

母は一人で話してる。
律は全部聞き流そうとして…

聞き逃せない
爆弾発言を聞いた。


「あ そうそう
今日久々に 律の世話係帰ってくるのよ

貴方が帰ってくること伝えたら
喜んでたわよ。

美濃さん」







「MAZI?」





どうやら魔王が帰ってくるそうです。
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