セカコイ 長編

□小さな恋物語@
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丸川幼稚園。

丸川幼稚園は
町内に幼稚園が少ない中
比較的どんな子でも受け入れようと
安易な入園試験しかださない
善良的な幼稚園だ。

此処にはほぼ育児放棄された子供や
訳有りの子などたくさんいる。




そして


男好きな男の子
そんな
異色な性癖をもった子供たちも…。
丸川幼稚園

エメラルドぐみに集まっていた。

そんなことも露知らず
18という若い年齢で先生として
やってきた

小野寺律

は幼稚園の前に立ち尽くしていた。

「なんか緊張するなあ」

律の欠点

それは

猫や子供に好かれないことだ。
ていうか
律は学問を教えるのが生きがいで
中学生や高校生を担当しよう
と意気込んでいたのに
なんでよりによって幼稚園なんだろう。

学問もくそもあったもんじゃない。

しばらく待っていると
お偉いさんだろうか
幼稚園なのにスーツという正装で
男だけれど美人よりな
笑顔があやしい人がきた。


「あのお いいんでしょうか
正式に雇ってもらっちゃって」

胸元に
井坂
と書いてある。

年上だろう
律は申し訳なくなり
背中を丸めた。

「いいっていいって
それより仲良くやろーぜ七光り」

…。

それだけは言われたくなかった。

そう

律が有名な高校に入れたのも
大学に行かずに就職できたのも
全部全部
七光りが成したものだった。

(いや

俺だって大学に行きたかったさ。
でも父さんが
お前は優秀だから
大学なんて行く必要ない
って。

振り切って通うべきだったのかな。
やっぱ。
でも俺は

親が用意したレールを踏み外すのが
自分に極端に自信がないせいで

怖い。

俺は本当に能無しだ。
それにくらべて
父さんは…)

律が俯いたままで居ると
さっそく井坂は
律の担当する部屋に案内してくれた。

エメラルドぐみ。

他の幼稚園は
りんごぐみ
とかで分かりやすいのに
なんでエメラルド?
とは突っ込まないでおこう。

入った途端に思ったのは
やたらと将来有望そうなイケメンが多いな
ということだった。

だけど態度はそれぞれ。

挨拶した律に対し
キラキラした風貌の園児は
偉いことにちゃんと律の方を向いている。

その横にいる無表情の園児は
千秋は?
と呟いて
見ているのはまったく別方向。

そして

律が最後に見たのは


「…」


部屋の一番奥で寝ている
黒髪の園児だった。
誰が入ってきたか
なんて興味ないみたいだ。

なんでだろう。
放っておけばいいのに
律は近付いていた。

「あの
さがくん
だっけ 起きれる?
俺ね 今日から君らの先生だから」

律はマメな性格だ。
園児相手にも本気になり
名前を全部覚えてきた。
それが最低限のルールだと思ったからだ。

嵯峨
は目を開いて
こちらを見た。

よかった起きてくれた。
そう思って
できるだけ優しい笑顔を律は浮かべる。
若干ひきつってはいたけど。

けれど
嵯峨はそんなもの興味ない
という風に律の全身を眺めて

それから一言

吐き捨てるように言った。



「前の先生のほうが良かった」


空気の固まる音。

井坂は笑い
他の園児もつられて爆笑した。

コイツ…!


園児だけど
初対面だけど


殴っていいですか。


律は拳を自分の膝に叩きつけ
これからの生活のいやな予感に
涙をのんだ。

だからガキは嫌いなんだ!!
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